まず動く2

ブログ「まず動く」の写真容量が不足したため、ここに改めて「まず動く2」を立ち上げました。以前のブログ同様に、写真付き日記のつもりで投稿します。ご覧いただければ嬉しい限りです。
 
2017/07/11 22:26:05|研究・教育の思い出
看護姿勢・動作が分かる木製人型モデル
 業務で起こす看護師の腰痛は約80%と多い。そこで、看護専門学校で「人間工学」の講義を受け持っているので、その中で腰痛予防に関わる身体の力学(ボディメカニクス)の話しをする。人間の起立は基本姿勢であって、この起立状態を維持する姿勢の原理を説明する。その説明を分ってもらうために重力、重心、重心線、支持基底面、テコの原理、力のモーメントなどの物理の話をする。看護学生は高校で生物を履修し、物理は習っていない学生が多く、中学で習う数学についても一次方程式は忘れているというのが現状である。理系のセンスはほとんど持っていない。このような背景を持つ学生に上述した、姿勢を維持するために関わる物理の基礎を分かってもらうにはどうしたら良いかを考えながら講義を行っている。

 一般に物事の理屈が分かってくれば、やる気を一層起こしてくるのが普通である。日常使っているホチキスや消しゴムなどの文房具を取り出し物理との関わりを説明する。例えば、ホチキスならテコの原理が、消しゴムなら圧力の話しをし、物理と文房具が関わっていることの話しをし、その関係を理解してもらう。また、看護動作のなかで患者を仰臥位から側臥位に体位変換する場面ではテコの原理と関係があるとか、褥瘡(床ずれ)は圧力と関係があるなど看護動作・姿勢にも物理と看護が深く関係していることを説明する。こうして、物理があらゆる人や物の姿勢・動作に関係していることを解説する。物理の力学に興味を持つようになると、今度は人が立つとか座る動作・姿勢が物理・力学に関係していることを理解してもらう必要がある。上述した重心、重心線、支持基底面、力のモーメントなど力学の話しに移っていく。

 腰痛は前傾姿勢で重い荷物を持つときによく起こす。つまり、腰を中心に上体をお辞儀するような姿で荷をもつから腰部に大きな負担がかかり、腰痛が起こる。これはある軸(腰)を中心に重い上体が90°ほど回転すると腰に体重の4倍とも5倍ともいわれる大きな力がかかるという事実がある。そのために脊柱に大きな力がかかり腰痛が起こるといえる。このような大きな力がかかっているという事実は目に見えないので一般には理解しがたい。

  以上のように人は何らかの作業を行う場合、関節を中心に角度は小さいが身体部位を回わす動きを行い作業を成し遂げている。この動きを行うため筋肉は大きな力を発揮する。ベッド回りの看護作業であれば、ベッド上の患者のケアをするために、前屈を余儀なくされれる。前屈しただけでも腰に大きな力がかかるのに、重い患者を持ち上げ移動するとなるとさらに腰の負担は増加する。

 ベッド回りの看護動作・姿勢を説明するために、関節を中心に手足、胴体、頭部が動く写真のような木のモデルを作成した。このモデルを使うと、お辞儀するときには人は無意識に臀部を後ろに引いている姿を再現できる。このような姿勢をとるために人は倒れることはない。また、支持している脚部を真っ直ぐにしておいて胴体部を曲げると片足立ちが出来ることも示せる。胴体部を曲げないで支持脚に角度をつけても片足立ちが出来る。このように人が倒れる・倒れないということをこのモデルで示すことができる。こうして、人が両足で立つ姿、お辞儀姿、片足立ち姿をこのモデルで示し、倒れるということは、重心線が支持基底面の外に出るからであると説明できる。そのため、このモデルを観ていると人の転倒の理屈が理解出来るので、学生にとって物理と人の姿勢との関係がよく理解できるようになったと評判がいい。【2017年6月14日】

2017年7月15日 自宅にて記す







2017/06/26 21:35:54|研究・教育の思い出
KJ法を使ったグループワーク(ブレーンストーミング)
 2017年、4月から2016年同様に講義初日にKJ法の解説、2回目以降KJ法による講義のノート(図解化)を宿題とし、15回の講義を無事終えた。提出された宿題には必ず目を通し、確認印を押し学生に返却した。返却する前にKJ法による講義のノートの出来映えが良いものとあまり上手に出来ていないもののコピーをとった。そのコピーをパワーポイントに移し、氏名や作成日などの記入もれ、島作りの枠線の細さなど不具合ヶ所の指摘を次回講義前に解説するようにした。14回にわたるKJ法による講義のノート作りを行うことは忙しい看護学生にとって大変かどうかの感想も毎回の提出A4用紙に記入してもらった。最初のうちは大変だとの意見も多々あったが、回を重ねるうちに面白く楽しくなったという意見も多く聞けるようになった。そして、宿題回数が10回を越す頃になると上手くまとめる学生が多くなり、KJ法による講義のノート作成が楽しいとの声も多く聞けるようになった。
 
 問題を解決するためのアイディア収集は、ブレーンストーミングによる方法が良い。このブレーンストーミングというのは、ひとつの問題についてあらゆる角度から討論し、その場で回答を求め、短時間に大量のアイディアを得る方法である。ブレーンストーミングには4原則がある。それは、以下のようである。
(1)「批判をするな」:他人の意見を批判してはいけない。
(2)「自由奔放」:思いついた考えをどんどん言う。
(3)「質より量」:できるだけ多くのアイディアを出せ。
(4)「連想と結合」:他人の意見に触発され、連想を働かせ、他人の意見に自分のアイディアを加えて新しい意見として述べる。
 
 KJ法による問題解決とは、複数人でブレーンストーミングを行い、その後に問題解決の1行文章をシールに書き写し、問題点を明らかにし問題解決の道を探ることを行う。15回の講義が終了後にグループワーク(ブレーンストーミング)を行った。提起した課題は「各自が遭遇したヒアリ・ハットを報告し、そのヒアリ・ハットをKJ法図解化する。図解を見て事故はなくせるかを検討せよ」とした。ブレーンストーミングを30分ほど行い、KJ法による島作り作業(図解化)を行った。他の学校でも行ったが、ここでは、旭中央病院付属看護専門学校で行ったKJ法による図解化作業の様子を説明する。この学校の1年生は59人である。場所は、旭中央病院内の広い講堂を使い、そこに6人ずつ座れるテーブルと椅子を設け、10グループとした。写真は10グループに分けた学生がブレーンストーミングを終え、ヒヤリ・ハット事例をまとめている(図解化)様子である。集合写真は、1年生全員59名で全員がブレーンストーミングを終えた直後の記念写真で、看護初学者にとって初めて聞いた講義「看護人間工学」を終了しほっとしている姿がうかがえる。
 
 以上述べたのようにKJ法図解化でまとめた講義のノートを14回にわたり作成した。最初は初めて聞くKJ法で戸惑ったようだ。回を重ねるうちに個性溢れる作品が出来上るようになり、まとめるのが楽しくなったという学生が増えた。
 
 14回にわたりKJ法による講義のノートづくりを指導した。これは、どちらかというと個人ワークである。ブレーンストーミングは複数人で行うのでグループワークである。講義のノート作りだけで終わると、本来のKJ法による問題解決ができない。個人ワークは、グループワークであるブレーンストーミングを行い、その結果をまとめる(島作り、図解化)時に役立つことを念頭においた演習のつもりで行った。といって、グループワークとしてブレーンストーミングばかりを行っていると時間不足になり、本来の講義「看護人間工学」は終わらない。そこで、KJ法による講義のノート作りは大変であろうが、本来のKJ法による問題解決ができるようになるための演習のつもりで行った。グループワークでブレーンストーミングを行うのは、講義最終日に1コマ時間をとってもらい、KJ法による問題解決の手法を学んでもらった。そのお陰で、ブレーンストーミングは楽しく行え、その結果をまとめる図解化も講義のノート作りで腕を磨いておいたお陰で、問題なく奇麗にスムースにまとめ上げることが出来た。
 
 KJ法は図解化までは比較的楽に行える。最初の図解化は問題解決の第1ラウンドであって、この図解化で解決の先が見えない場合は、第2ラウンドを行う。こうして何回かKJ法を重ねるうちに問題解決の糸口が見えてくる。問題解決以外でのKJ法の応用は、個人あるいはグループで行う視察旅行のまとめ、新製品開発、創造性開発、個人で行う看護研究、旅行記作成、論文・レポートのまとめなどが考えられる。
 KJ法図解化までは、誰でもが比較的容易に行える。論文やレポートあるいは旅行記などの報告書を書くときは、図解化の先の文章化が待っている。この時点で行き詰まることはあるが、KJ法で出来上がった図解化をながめると一行見だしがあり、その見だし中に要点が書かれてあるので、見出しと要点を見ながら文章化すれば、文章力にもよるが立派な報告書ができ上がるはずである。高学年になるとグループワーク、看護研究も行うであろうから、その時にここで習ったKJ法が役立つことを期待する。【2017年6月15日】
 
平成29年6月26日(月) 自宅にて記す
 







2017/06/26 21:34:23|研究・教育の思い出
看護初学者が授業中、自然にKJ法図解化をマスター
 看護専門学校で「看護人間工学」の講義を行うようになってから、かれこれ20年近く経つ。今では5校の看護専門学校から講義依頼を受け、春学期は毎日「看護人間工学」の講義を行うために忙しく動き回っている。看護専門学校に入学する学生の多くは、高校で物理を履修していない学生が多く、それに数学も苦手な学生が多い。「人間工学」という教科名を聞くと、その内容不明で物理や数学を使う難しい分野であると思っている。しかし、人間工学応用製品は身近には「ナイフ、包丁、鍋、釜、食器」など台所用品、物を作る「工具や道具」、ベッドや車椅子などの「看護・介護補助具」、乗り物の「椅子や手すり」、SUICAやパスモで知られる「駅の改札口、券売機」、ジュースの「自動販売機」など枚挙に暇ないほどある。さらに、これらの道具や機器を製造する人が仕事をする場合の動作・姿勢研究も人間工学の範ちゅうに入る。
 
 看護師の腰痛は多い。その腰痛の発症要因のひとつに地球上の重力がある。脚部、腕部、胴体部、頭部など人の部位にも質量があり、重力が作用している。腰部を中心に上体部位を前屈させると腰部には大きな力がかかる。このように、人体の姿勢を変えるだけで関節部には大きな力がかかり、重い荷を持つ場合にはさらに大きな力がかかることは良く知られていない。人体部位にかかる力を考究する分野はボディメカニクスと言う。看護や介護分野では、患者や利用者を持ち上げる、移乗・移動する、仰臥位から長座位に体位変換するなど重い患者の体位変換あるいは持ち上げ・移動する介助動作は多い。このとき、看護師の身体にかかる力や負担を評価するために、重心・重心線、支持基底面、テコ、力のモーメント、圧力、摩擦などの物理のチカラを借りる必要がある。看護人間工学の講義では上述した身近な便利グッズ、道具や機械・機器(医療機器)、看護師の動作・姿勢などについて、看護作業、看護姿勢・動作と関係づけながら解説する。
 
 看護は、年齢、性別、体格、病状など、ひとり一人異なる患者のケアを行うので、容体の観察は重要である。使用する用具や医療機器、薬品、食事、ベッド環境、患者への対応など様々な形態がある。こうした複雑な環境の中で問題が起こると、それを解決するためには質的データを集める必要がある。そのような場合に、役立つ手法のひとつにKJ法がある。KJ法のkは川喜田、Jは二郎の頭文字である。KJ法は、開発者の川喜田二郎先生が発案した問題解決、創造性開発などを行うときに役立つ問題解決の手法である。人間工学は上述したように、多岐にわたる分野の学問であるから、KJ法をマスターしておくと、複雑な問題を比較的容易に短時間で解決できる可能性がある。40年近く前(昭和55年前後)、東工大に所属していた折り、川喜田二郎先生とネパールへの技術援助で「自然力ボート開発研究」でご一緒したことがある。この時、KJ法を先生から伝授された。その後は、このKJ法を使い研究上の問題解決、論文・著書の執筆、海外視察のまとめなどに大変重宝した。先生が存命の時は、先生は川喜田研究所所長であった。その研究所がKJ法専用のミシン目入り「KJ法ラベル」を発売していた。ところが先生他界されてから川喜田研究所はなくなり、KJ法ラベルは手に入らなくなった。
 
 2014年5月のある日、姫路医療センター付属看護学校で講義の帰り、姫路駅周辺を散歩中に百円ヒョップダイソーに入った。店内でシールが240枚入った「タックシール3色枠入り」という商品(フリーラベルNo.14)が目についた。早速、これを10個(1,000円)求めた。このラベルは川喜田研究所発行のシールに比べ一回り小さい。しかし、KJ法図解化に使用するには問題なく使えると判断した。看護の世界でもKJ法の講習会が開かれていると川喜田先生から聞いていたので、KJ法を習うには講習会や研修会に参加しないと覚えにくいと思っていた。私が毎週講義する「看護人間工学」の内容を学生が通常ノートに記録する代わりに、上記のタックシールを使いシールに一行メモを記録し、KJ法を用い図解化する方法を考えた。これを「KJ法による講義のノート」呼ぶ。15回ある講義のなかで最初の1回でKJ法の説明をする。残る14回の講義でKJ法図解化を学生にやってもらえば、毎回の講義のノートは出来上がり、その上、KJ法の図解化を覚えられるのではないかと考えた。
 
 2015年、姫路で買ったラベル(シール6枚入り)1枚を各学生に配布し、授業の不明な点、質問、授業感想などの質的データをシールに書いてもらい提出させた。また、量的データとして学生の年齢、私の推定年齢、通学時間などをシールに書いてもらい、クラスの年齢、通学時間、私の年齢などのヒストグラムを描き統計的な説明も行った。こうして学生がシールに文字を書くことに違和感がないかどうかを調べた。
 
 2016年、4月から始まる1年生の看護人間工学で初めて学生にKJ法による講義のノート作りを本格的に開始した。心配なのは学生全員がタックシールを持っているかである。そこで、学校当局にお願いし、あらかじめまとめて買ってもらい学生に配布してもらうよう手配した。さもないと、品切れで授業が始まっても手元にシールがないことが予想される。シールを持っていることを前提に、最初の授業でKJ法の話しを、2回目以降15回までKJ法にこだわらず普通のペースで人間工学の講義を行った。その講義内容の要点を学生はシールに書きとめるので、そのシールをKJ法図解化にすることを宿題とし、1週間先の講義日に提出することにした。その結果、多くの学生からは、宿題のまとめにKJ法は、役立つという報告があった。その理由は、講義要点が見通せるので、講義内容がよく分かるという。わからなところは教科書を見れば分かるという。シールがA4用紙1枚に収まるようにするためには、シール20枚前後が適当である旨を指示した。シールの数が多くなった場合、裏面を利用してもよいこととした。A4用紙は学校側から配布してもらった。こうすることにより、同一土俵上に学生全員分のKJ法ノート作品が出来上がるので公平であると考えた。
 
 写真左側2枚は、11回目の授業「人ー物ー物の安全を考える」という演題の講義を聴講後にKJ法による講義のノート(図解化)を作成したものである。右側の2枚は、後述するブレーンストーミングの課題「各自が遭遇したヒアリ・ハットを報告し、そのヒアリ・ハットをKJ法図解化する。その図解を見て事故はなくせるかを検討せよ」で行って得た図解化例である。左側と右側の作品は写真では同じサイズに見えるが、左側のKJ法の講義のノート2枚はA4用紙である。右側の図解化2枚は、A3用紙(A4用紙の倍)にまとめたものである。【2017年6月15日】
 
平成29年6月26日(月) 自宅にて記す
 







2017/06/18 15:06:10|研究・教育の思い出
感動の瞬間!戴帽式
 多くの人が人生で出会う一般的な式典に入学式、卒業式、結婚式、入社式、葬式などがある。自身が行い参列出来るのは入学式、卒業式、結婚式、入社式である。学校に入ると入学式と卒業式はペアで実施される。結婚式と入社式は普通なら1度、しかし複数回行う人も多々ある。自身の葬式は当たり前だが1度きり、残念だがその式典には参列できない。これらの式典は誰もが経験するので式典の様子はある程度わかっている。
 上述した式典以外で特殊環境の職業に従事する人たちのために行われる式典に戴帽式がある。その式典は、看護学校に通う看護初学者が1年生あるいは2年生のときに行われる儀式である。不衛生だ、点滴中の薬液に引っかかり医療事故を引き起こす(不衛生・邪魔・危険)などの理由でナースキャップを廃止した病院が多い。そのためナースキャップをつけている看護師の姿を見ることがなくなった。そのために、戴帽式は行われなくなったかというとそうでもない。学生達にとっては戴帽式を終えたこの瞬間から看護師を目指すものとしての職業に対する意識を高め、その責任の重みに目覚める瞬間である。
 
 毎年、新学期が始まって間がない休日に、私が非常勤講師を努める済生会川口看護専門学校では戴帽式が行われ、招待を受けるので夫婦で列席している。戴帽式は、ひとり1人が看護師になる意志を公にあらわす式典でもある。そして、我々一般人が人生で一度は必ずお世話になる看護師が誕生する瞬間の姿でもある。看護初学者達は、身が引き締まる思いでこの式典に臨んでいるに違いない。戴帽式の式典が行われた場所と式典の式次第は下記の通りである。
 
済生会川口看護専門学校 戴帽式
日時:平成29年4月29日(土) 13:30
会場:川口総合文化センター リリア 4階 音楽ホール
 
1. 開式の辞
2. 戴帽の儀
3. 学校長式辞
4 来賓祝辞
5. 祝電披露
6. 戴帽生誓いの言葉
7. キャンドルサービス ナイチンゲール誓詞 
8. 花束贈呈 済生会川口看護専門学校 同窓会
9. 校歌斉唱
10. 閉式の辞
 
 戴帽を受ける学生は、名前を呼ばれると順次壇上に進み頭にナースキャップを看護師先輩の教員からかぶせてもらい、いったんは席にもどる。やがて、会場の照明は全部消され真っ暗闇となる。壇上に置かれたナイチンゲール像片手のローソクに火が灯される。ナースキャップを身につけ終えた学生が、再びひとり1人が壇上に向かう。壇上へ向かう途中に置かれてあるローソクを手に取り、それを持って壇上へ進む。壇上のナイチンゲール像片手のローソクの火を受け渡してもらい、壇上に整列する。全員のローソクに灯がともると真っ暗だった会場がほのかに明るくなり、厳粛な気分になる。ナイチンゲール像を前にして厳かに「ナイチンゲール誓詞」を朗読する。その声が大きな会場一杯に響きわたり、式典の最高潮を迎える。
 
  「ナイチンゲール誓詞」の朗読が終わると、火の灯ったローソクを持ちながら、会場内の自分の席にゆっくり戻る。ローソクに火がともっているので、歩く速度は必然的に遅い。全員が移動している間、厳粛な宗教音楽が流れる。この音楽が言葉では言い表せないほど心に響く。何とも言えない厳かで落ち着いた気分になり戴帽式が盛り上る。これからは、臨床の場で患者の世話をする看護実習が始まるので、看護初学者としての一歩を今日この日に踏み出したといえる。【2017年4月29日】
 
写真:戴帽前の学生たち

平成29年6月18日(日) 自宅にて記す
 







2017/06/11 22:25:38|映画・演劇
素晴らしかった練馬交響楽団 第65回定期演奏会

 クラシック音楽と初めて出会ったのは、戦後間もない1946年(昭和21年)5月から1948年11月に行われた極東国際軍事裁判のラジオ放送である。この裁判の様子はラジオで連日放送され、それが開始される直前に流れる音楽がベートーベンの運命交響曲第5番である。あの有名な運命交響曲の“じゃじゃじゃ じゃ〜〜ん”という音楽の響きが、小学校4年生の私の耳に染みついた。その時はその音楽が誰の作品で題名は何であるのかは、皆目分からないままメロディーだけ覚えた。中学校に入り、それがベートーベンの交響曲第5番の出足部分であることが分かった。
 その後、大学時代にJR山の手線 高田の馬場駅 周辺の「田園」、「らんぶる」、「白鳥」などの名曲喫茶店によく通った。そこではクラシックを聴きながら、宿題、レポート作成、読書、同級生と輪講と言って洋書を読む勉強会などで2時間ぐらいコーヒー一杯で費やした。喫茶店では常にクラシック音楽が流れているので、気に入った曲、感動する曲、その作曲家、演奏楽団などの名前をいつの間にか覚えた。
 始めて買った毎分78回転のSP盤レコードは、ロッシーニーの「セビリアの理髪師序曲」と記憶している。その後、1時間位の長時間演奏が収まる毎分33と1/3回転のいわゆるLP盤が出回り、ベートーベンの「運命」を買った記憶がある。こうして、若い頃はクラッシック音楽を聴くことに夢中になったときもあった。大学を終え、研究所に勤務していた頃は、レコードコンサートに通ったり、昼時、研究所内の会議室にプレーヤーと大型スピーカーを持ち込み、所員のためのレコードコンサートをよく開催した。
 映画も好きなのでよく観た。それらはスイングジャズ映画「グレンミラー物語」、「ベニーグッドマン物語」、ミュージカル映画「雨に歌えば」「パリのアメリカ人」「王様と私」「ウエスト・サイド物語」「シェルブールの雨傘」「マイ・フェア・レディ」「メリー・ポピンズ」「サウンド・オブ・ミュージック」などで、沢山のミュージカル映画を観た。定年退職後は、妻Makikoよく出かける海外旅行でニューヨーク、ロンドンへ行けば、本場ミュージカルを必ず観賞している。東京で開催されるジャズ・フェスティバルにもここ何年か前から行くようになり、クラシック音楽だけでなくジャズも聴くようになった。「マンボNo.5」を聴くと若返った気分になる。
 音楽を聴くことが好きなため、今日は久しぶりにクラシック音楽を聴きに練馬文化センターへ出かけ、練馬交響楽団 第65回定期演奏を聴いてきた。曲目は、チャイコフスキー/スラブ行進曲、コダーイ/ガランタ舞曲、チャイコフスキー/交響曲第5番である。チャイコスキーは有名なので、CDの交響曲全集を持っているし、スラブ行進曲は聴く機会が多いのでよく知っている。とこが、コダーイのガランタ舞曲は始めて聴く曲であったので、少々退屈した。スラブ行進曲と交響曲第5番の演奏は久しぶりに聴いたこともあって、えらく感動し、涙が出てきた。それほどに、よい演奏のクラシック音楽演奏であった。名曲喫茶店でよく聴いたころの懐かしい青春時代が思いだされ、やはり今日の生演奏のすばらしさを改めて実感し、感動を覚えた。指揮者は松尾葉子で、フランスのブザンソン国際指揮者コンクールで女性として史上初の優勝をされ、一躍注目を集めている。演奏は聴衆に感動を与える素晴らしいもので、とてもよい演奏会であった。盛大な拍手は鳴り止まず、アンコールにアンダンテカンタービレを演奏して幕を閉じた。

 4月から講義の旅で疲れがでてきたころであるが、今日の演奏を聴きすっかりその疲れが取れ、素晴らしい演奏から元気をもらって帰宅した。明日からの週で講義の旅は終わるので、再びのんびりした生活に戻る予定である。【2017年6月11日】

平成29年6月11日(日) 自宅にて記す