クラシック音楽と初めて出会ったのは、戦後間もない1946年(昭和21年)5月から1948年11月に行われた極東国際軍事裁判のラジオ放送である。この裁判の様子はラジオで連日放送され、それが開始される直前に流れる音楽がベートーベンの運命交響曲第5番である。あの有名な運命交響曲の“じゃじゃじゃ じゃ〜〜ん”という音楽の響きが、小学校4年生の私の耳に染みついた。その時はその音楽が誰の作品で題名は何であるのかは、皆目分からないままメロディーだけ覚えた。中学校に入り、それがベートーベンの交響曲第5番の出足部分であることが分かった。
その後、大学時代にJR山の手線 高田の馬場駅 周辺の「田園」、「らんぶる」、「白鳥」などの名曲喫茶店によく通った。そこではクラシックを聴きながら、宿題、レポート作成、読書、同級生と輪講と言って洋書を読む勉強会などで2時間ぐらいコーヒー一杯で費やした。喫茶店では常にクラシック音楽が流れているので、気に入った曲、感動する曲、その作曲家、演奏楽団などの名前をいつの間にか覚えた。
始めて買った毎分78回転のSP盤レコードは、ロッシーニーの「セビリアの理髪師序曲」と記憶している。その後、1時間位の長時間演奏が収まる毎分33と1/3回転のいわゆるLP盤が出回り、ベートーベンの「運命」を買った記憶がある。こうして、若い頃はクラッシック音楽を聴くことに夢中になったときもあった。大学を終え、研究所に勤務していた頃は、レコードコンサートに通ったり、昼時、研究所内の会議室にプレーヤーと大型スピーカーを持ち込み、所員のためのレコードコンサートをよく開催した。
映画も好きなのでよく観た。それらはスイングジャズ映画「グレンミラー物語」、「ベニーグッドマン物語」、ミュージカル映画「雨に歌えば」「パリのアメリカ人」「王様と私」「ウエスト・サイド物語」「シェルブールの雨傘」「マイ・フェア・レディ」「メリー・ポピンズ」「サウンド・オブ・ミュージック」などで、沢山のミュージカル映画を観た。定年退職後は、妻Makikoよく出かける海外旅行でニューヨーク、ロンドンへ行けば、本場ミュージカルを必ず観賞している。東京で開催されるジャズ・フェスティバルにもここ何年か前から行くようになり、クラシック音楽だけでなくジャズも聴くようになった。「マンボNo.5」を聴くと若返った気分になる。
音楽を聴くことが好きなため、今日は久しぶりにクラシック音楽を聴きに練馬文化センターへ出かけ、練馬交響楽団 第65回定期演奏を聴いてきた。曲目は、チャイコフスキー/スラブ行進曲、コダーイ/ガランタ舞曲、チャイコフスキー/交響曲第5番である。チャイコスキーは有名なので、CDの交響曲全集を持っているし、スラブ行進曲は聴く機会が多いのでよく知っている。とこが、コダーイのガランタ舞曲は始めて聴く曲であったので、少々退屈した。スラブ行進曲と交響曲第5番の演奏は久しぶりに聴いたこともあって、えらく感動し、涙が出てきた。それほどに、よい演奏のクラシック音楽演奏であった。名曲喫茶店でよく聴いたころの懐かしい青春時代が思いだされ、やはり今日の生演奏のすばらしさを改めて実感し、感動を覚えた。指揮者は松尾葉子で、フランスのブザンソン国際指揮者コンクールで女性として史上初の優勝をされ、一躍注目を集めている。演奏は聴衆に感動を与える素晴らしいもので、とてもよい演奏会であった。盛大な拍手は鳴り止まず、アンコールにアンダンテカンタービレを演奏して幕を閉じた。
4月から講義の旅で疲れがでてきたころであるが、今日の演奏を聴きすっかりその疲れが取れ、素晴らしい演奏から元気をもらって帰宅した。明日からの週で講義の旅は終わるので、再びのんびりした生活に戻る予定である。【2017年6月11日】
平成29年6月11日(日) 自宅にて記す