 看護大学、看護専門学校、福祉専門学校で「看護人間工学」という科目を教えています。この教科では、人間が使う道具、機械類から始まり人間を対象とする看護や介護分野における諸問題を解決する糸口になることを講義します。とくに看護や介護作業で起こす可能性が高い腰痛発症を軽減するため、ボディメカニクスという力学にかかわる話しに重点をおいています。看護・介護に関わる皆さんは限りなく文系の方たちですので、物理や力学をいかに違和感なく理解していただくかということに毎年苦労しています。物理や力学の話しをしたり、あるいは黒板に数式を書いたりすると嫌われがちです。そこで考え、本書の最初は自分の身体を使って自ら動作実験をしてもらうことを書いています。その動作がなぜできないかの理屈を順次読み進んでいくうちに分かるような章だてにしました。自分自身が倒れるとか、物を持ったり動かしたりしたときに危ないとか苦しい思いをするのはなぜかという理屈がわかれば、それが腰痛発症の予防になり、看護や介護の労力軽減に役立つと考えています。
腰痛予防や看護・介護の負担を軽減する『ボディメカニクス』の活用を!
看護師・介護士の腰痛発症率は70%とも80%とも言われています。腰痛の予防方法として,動作を行うときにボディメカニクスを活用することが推奨されています。このボディメカニクスとは,物理や力学の原理を活用して看護・介護者の腰痛などを予防し,利用者が安全かつ安楽に介護を受けられるようにする技術です。ここで,力学や物理と聞くと,ちょっと苦手だなぁと思う方も多いでしょう。本書では,これらを身近な事例や簡単な実験を用いて解説します。
第 1章 やってみようボディメカニクス! つま先立ちの実験 ●壁にお尻と踵をつけてお辞儀する実験 ●片手,上体,片足を壁につけて壁と反対側の足を持ち上げる実験 ●座位姿勢で足位置を変えて立ち上がる実験 ●座位姿勢で上体を傾けないで立つ実験 ●立位の人があなたのおでこに指先を当てた状態で立つ実験 ●立位の人があなたに手を差し伸べた状態で立つ実験 ●座ったあなたが前傾しながら立つ実験 ●慣性の効果を確かめる糸切り実験 ●10円玉が居残る実験で慣性の効果を知る実験
第 2章 身近なボディメカニクスを考える人間の姿勢・動作と力学について(ボディメカニクス) ●日常生活に見るボディメカニクス ●仕事に見るボディメカニクス ●看護・介護に見るボディメカニクス ●スポーツに見るボディメカニクス
第 3章 ボディメカニクスを理解するためのやさしい力学 人間の機能,特徴,能力の限界 ●力と圧力の違いは何か(力の単位,圧力の単位,質量,ベクトル) ●滑らかな動きと速度・加速度について ●動き出したら止まらない慣性について ●重力があるから腰痛が起こる ●重心を支持基底面内に収めて転倒を防止する ●テコの原理を知って仕事を楽にする ●力のモーメントで負担の大きさがわかる ●姿勢の安定・不安定について ●実験課題の解答
第 4章 看護・介護の姿勢・動作とボディメカニクス看護・介護に役立つ基礎ボディメカニクス ●腰痛を起こす要因と予防 ●自力で動く姿勢・動作を考える ●看護師の日常業務を考える ●負担が大きい看護・介護動作を考える ●用具を使用した看護・介護作業を考える ●看護・介護動作のエビデンスを考える ●看護介護動作のボディメカニクスとキネステティクについて ●ボディメカニクスを振り返る 看護・介護に役立つ基礎ボディメカニクス ●腰痛を起こす要因と予防 ●自力で動く姿勢・動作を考える ●看護師の日常業務を考える ●負担が大きい看護・介護動作を考える ●用具を使用した看護・介護作業を考える ●看護・介護動作のエビデンスを考える ●看護介護動作のボディメカニクスとキネステティクについて ●ボディメカニクスを振り返る
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