東京大学工学部(船舶工学科)、航空宇宙技術研究所(機体部、計測部)、東京工業大工学部(制御工学科)、放送大学(産業と技術専攻)、東京電機大学理工学部(知能機械工学科)と主に研究所、大学に長年勤務していた関係で所属していた学会も多い。それらは機械学会、計測自動制御学会、ロボット学会、バイオメカニズム学会、人間工学会、看護教育研究学会などである。これらの学会でいまだに脱会していないのは、日本人間工学会である。それは、ひとつ目に現在も非常勤ではあるが看護大学、看護専門学校で人間工学の講義をしているからである。ふたつ目は看護大学の先生方から依頼され実験装置の開発や試作を行っているからである。人間工学に関わる教育上必要な情報は、学会発表や送られてくる学会誌から得ることができる。こうした情報は受け身である。ところが、看護研究用の装置開発・試作をすると、その成果を発信したくなる。これは受け身ではなく情報を発信する立場であって、その発信ができる場が人間工学会である。
今年も日本人間工学会の下部組織である関東支部41回大会が12月10日(土)、11日(日)に東京豊洲にある芝浦工業大学で開催された。すでにブログに投稿した「ひずみゲージ」を応用した“注射針先の力を測る装置開発”と“点眼容器の内圧測定に関する研究”として発表した。正式な演題名は以下の通りである。
(1) 針先2軸の力測定器開発と穿刺角度の推定(第1報、2報)
(2) 点眼容器の使用性に関する研究〜点眼容器の内部圧力測定について〜(第1報、2報)
これらの内容は「2011年度 一般社団法人日本人間工学会関東支部第41回大会」講演集 「あなたのための人間工学」で閲覧できる。
(1)の概要は、看護師が患者に注射をするとき、少し針が反りかえるというのでその反りと針の刺入角度測定方法についてである。注射操作のベテランである共同研究者のK先生、S先生から「注射器の針は身体皮膚に対して15°〜20°」と教科書に書いてあるが、その角度を実験的に知りたい。また、「注射(穿刺)時の角度や針刺入速度で痛みが異なるのではないか」という疑問が投げかけられた。そこで、力はベクトルなので注射針を穿刺する時に押す水平力と下方にかける垂直力が分かれば、その力の成分から針が向かう方向(角度)が分かると判断し、2軸の力が測れる装置を開発した(第1報)。
(2)の概要は、点眼容器形状や容器材料によって、点眼しやすさが異なるので、その違いを見出す方法についての研究である。この差異を人間工学的な手法で明らかにしたいという相談を看護大学の先生から受けた。これもひずみゲージを応用した方法でやれそうだと判断し、ひずみゲージを容器に貼付した。しかし、容器に平坦な個所がなくゲージは貼りにくいことと、貼ったとしてもその個所のひずみは分かるが具体的な力や圧力は測れない。そこで、考えついたのは、超小型圧力変換器(直径3mm〜5mm)を用い、指中に収めて押せば圧力が測れると気づいた。しかし、測定対象の点眼容器は丸みがあることと押すと変形するという問題が生じた。指で押すときの指圧力は測れるがその測定精度が問題になっている。ところが、もしも既製の小型圧力変換器を容器内に挿入できれば、その圧力変動から容器の特徴が推測できるかもしれない。そう思い、超小型圧力変換器を点眼容器内に挿入し内部圧力が測定できるように工夫し、圧力測定を行った。
実験装置や工夫した内容は、後日ブログで紹介したいと思っている。【2011.12.10】
写真:共同研究者と芝浦工業大学 豊洲キャンパスにて記念撮影 2011.12.13 記