いくつも溜まったブログがある。昨日(2012.7.5)のことを今日投稿するというのは珍しい。昨日は、越谷市にある埼玉県立大学 健康開発学科 健康行動科学専攻 3年生の講義「健康生活測定」の一コマを担当し、測る技術の面白さについて話しをしてきた。
講義依頼をいただいたのは、埼玉県立大学が開設される以前から共同研究を行い、いまだに看護・介護分野の研究で交流を行ってK先生からである。昔からひずみ、力、圧力、加速度、変位といった物理量の測定を行ってきた。その関係で、力測定の応用としての看護や介護動作研究を20年近く一緒に楽しんできた研究仲間がK先生である。
K先生は上述した健康開発学科に所属し「健康生活測定」という科目を講義している。これまでのところ、塩分濃度計を使って味噌汁の塩分濃度を測定して、温度、直前に食べたもの、心理的負荷などによって好みの塩分濃度が変わるのか、というような実験をやってきたそうである。それに加えて、人間の行う動作を測る事例として、力や圧力測定例を示すと同時に実際の実験を通して「測る技術の面白さ」を学生たちに紹介したいということで講義依頼をされたようだ。
我々人間は力を発揮しなければ、鉛筆一本、本一冊たりとも持つことはできない。昔、コップを握る手は、水が入るに従いどのような握り力を発揮するのか、寝ている患者の臀部を持ち上げるのに看護師はどのくらい力を発揮するのか、あるいはギャッチベッド(背中が持ち上がるベッド)の背中が持ち上がるとき寝ている患者の背面にどの程度の力がかかるのかということを明らかにする研究を行ってきた。 さらに、最近ではNHKの「ためしてがってん」からの要請で、ベッド端に座っている患者を看護師が立ち上げ支援する時の@床反力測定を行った。また、A注射器内の溶液の圧力測定、B点眼容器の内圧測定、C注射針の反り量測定なども行った。こうした力変換装置は手作りで古くなったので、もう使えないかもしれないと思った。しかし、変換器を測定装置に接続し試したところ使えることがわかった。そこでこれらの装置を大学に持ち込み演示すれば、身近で見ることはまずない学生たちは、喜んで見てくれ操作してくれ、測る技術は面白いと感じるだろうとの思いでセンサー、変換器、測定装置、パソコンを持参し講義を行った。 講義に先立ち、測るために必要なセンサー、変換器、検出器、「測ってどうする」というような話しをした。測るということは、その測った結果をコントロール(制御)に使うことを強調し、前半は主に講義をし、後半は前述した実験装置の演示に時間を割いた。変換器や装置の説明後、学生自身が注射器を握り薬液(水)を注射器に入れたり出したりした。圧力変動が目に見えるようにスクリーン上に投影したので、全員がその圧力変動を観ることができる。注射技術の評価も直ぐに行えることの素晴らしさを実感できたようだ。この装置は注射器シミュレータ(インジェクション・トレーナー)といい、近い将来世にデビューする予定である。その他の床反力についても、学生がその床反力計に乗ると荷重がかかるプロセス(時間に対する力の変化)が目に見えるので、見えない力がこうして見えるようになることの素晴らしさを体験できたようだ。
こうして、「測る技術の面白さ」について講義し、午後14時40分から17時50分までの約3時間を楽しく過ごした。私自身は講義と実験を楽しんだが、学生が「測る技術の面白さ」を実感できたかどうかは不明である。一般企業、公務員、学校の先生になることを希望する学生たちで、理系のセンスはほとんどないと聞いていたので、授業感想を聞きたい。そこで、授業感想(評価)を提出するようお願いし、講義を終えた。【2012.7.5】
写真1:K先生の研究室にて老後のための手すり実習 写真2:学生の注射技術を指導するK先生 写真3:大画面上で得られた注射器内圧変動グラフの評価 写真4:講義を聴講した学生と記念撮影
2012.7.6 記
|