シネマ日乗

入間アイポットのユナイテッド・シネマ入間で観た映画の感想が中心になります(多分)。 ネタバレになってしまう可能性も・・・・・・。 その辺、ご留意ください。
 
2020/11/22 23:07:02|その他
こもりびと
 NHKが以前から大きいテーマとして取り上げ続けている「引きこもり」をドラマ化したもの。極めて珍しいと思うが「NHKスペシャル」の枠で放映されました。松山ケンイチさんが迫真の演技で当事者を描写しています。

 以前から、この件には重大な関心を持っていて、その理由は、自分も引きこもらーになっておかしくなかったから。今も、基本的には「準引きこもらー」的な生活をしていて、自分とこに仕事以外の電話だのメールだの、年にほとんどかかってこないし。別にそれでいいや、と思ってるし。

 このドラマは、当事者の方々のお話を汲んでオリジナル脚本をつくって製作されたという。凄くリアルで、もう一つ、いわゆる「8050」問題について、成程そうだよ、と改めて納得させられるものがあった。なにかというと、「8050問題」は絶対に解決しない、という事。その理由は、親が心底から自分の子供に謝ることはない、と断言できるから。このドラマでも、武田鉄矢さんが演じてた父親は、最後の最後まで、息子に要求ばかりしている。「生きててくれ」だの「許してほしい」だの。謝れよびっくりと思うのだが、この世代の連中は、「ゴメン」なんて一言が、どうしても口から出てこないらしい。風呂の栓みたいになってるようなんですよ。栓を抜けよ、と思うんだが。

 また、逆に、「ゴメン」ったって、態度から謝って「やってる」ってのが見え見えなんですよねえ。何について「申し訳ない」と思っておるのか?結局、自分の子供なんか、どーでもいいんでしょうね、この世代の親ってのは。
 その理由も分かる。今80代の人間は、子供時代戦争だった。あの厳しい時代を我々は生きてきたんだ、お前らは何だ、高度経済成長期(それも自分たちが築いたのだ)に子供時代で、何一つ不自由もなかったくせして!てなもんでしょ。腹の底にこの意識がある限り、どう謝ったって、「本気」にはならないでしょ。

 自分の子供を殺した農水省事務次官のオヤジに心底ムカついてるのだが(獣医のボスは農水省だから、なおさら腹が立つ)、自分の子供を殺しといて、被害者面してるらしいから。自己保身の固まり。これが今の80代で「偉そうな」役職についてた連中の意識ですよ。こういう連中がつくったのが今の日本だってこと。

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2020/10/25 21:40:57|映画 その他
TENET テネット
 話がこんがらがって訳分らなくなる、と脅されてる映画。うーむ、なんとかついていけたと思ったんだけど、後で「ん??!」ってなるところもあって。。。

 時間をテーマにすると大体こんがらがりますよね。タイムループもそうだし、その仕組みというか方法も含めて。今回は、「エントロピーは増大する」という法則の逆を使う作戦です。エントロピーが減少する世界=時間の逆流で、それを使って世界を原初に戻しちゃうぞ〜〜、とどうやら未来の人間が図ったらしい、それを食い止めようと主人公のチームが悪戦苦闘します。

 さすが「インセプション」を撮った方だけあって、話がとりあえずは破綻しないんです。エントロピーが減少する中にいると、呼吸もできないから酸素ボンベ、とか。しかあし、途中からなぜかタイムスリップして過去の時間に普通に現れることもできるらしい、となります。あとから考えるとよー分らんのですが、観ている時は、ああそうか、と簡単に納得してしまっていたなあ・・監督さんの術中にはまっちゃってますなあ・・・・。上映時間は長めなはずなんですが、椅子に座り直す余裕もなかった、、、位、緊迫したシーンが続きます。疲れたよ〜〜。いつか、ビデオかなんかで観て、戻ったり進んだりあれこれやらないとちゃんとした理解はできないんじゃないかな。

 主人公を演じた方、ひょっとして「ブラックパンサー」の後継もやれるんじゃないかしら、と思ってしまった。「ブラックパンサー」の主役の方が亡くなられたのはつくづく残念で。

 そういえば、「エントロピーは増大する。その逆はない」ってのは高校の時に習って、すごく納得した覚えが。「エントロピー=乱雑さ」だそうですが、成程、だから自分の部屋が散らかるわけね、別にそうしようと思ったわけでもないのに、と。エントロピーが減少してくれれば部屋ももそっと綺麗になるのになあ、なんて。

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2020/10/21 21:31:00|映画 あ行
ヴァイオレット・エヴァーガーデン
 非常に繊細な物語。戦争が一方の大きなテーマで、その意味では「ミッドウエイ」よりもこちらの方がメッセージが強い。こういう話の方が、人に届くんじゃないかと思うんですよ。

 元々このお話は連続アニメとして放映されていたもので、そのお話の先をオリジナルの劇場版にしたとの事。ので、エピソードがやや速足で、特に戦争のシーンは、細かいことがよく分からない。恐らくその辺は連続アニメではきちんと説明されているのではないかと思うのだけど、そちらは観ていないので。ただ、あーなってこーなって、という話として語られていない分、かえって色々考えさせられる。何があったのか。。。。

 戦争が終わって、生き残った人はなんでもいいから生きてかなくちゃならない、それが実は大きいテーマで、戦争のせいで残った身体の傷も、わだかまりも、全部引き受けて生きるしかない。そこがとても繊細に描かれています。

 京都アニメーションの仕事を観るのは「聲の形」以来ですけど、とにかく絵が美しいので、凄いなと。事件が起きてから時間がたってますが、犯人の男の思い込みって何なんだろう?オトコはいらん、という結論になっちゃいますよ、男の皆さん、真剣にどうしたものか考えるべきなんじゃないかなあ?

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P.S この話では、一応日本語が話されてますが、書き言葉は日本語ではなく、なにかのアルファベット風に綴られる言語、ということになっています。主人公の職業が一種のキーパンチャーで、タイプライターで手紙を書き留めることができる、のがキモなので。日本語だと、タイプライターは全く使えないですもんね。そこら辺の翻案が丁寧で感心しました(アルファベットとも違う、専用の文字を創ったようです)。







2020/10/01 10:39:26|映画 ま行
ミッドウェイ
ローランド・エメリッヒ監督といえば「インディペンデンス・デイ」に代表される、なんか上手い事行き過ぎの大味&しかし映像は凄い、という映画を連想しちゃうんですが。そこからかけ離れた作品です。エメリッヒさんは、この作品を撮るために米国礼賛大味映画をつくってたんかなあ(で、ハリウッドの支持を得、お金も得た)と考えてしまった。

 エメリッヒ作品はしかし、以前から結構生き死にについては容赦ないところがあると感じていましたが、今回はそれを存分に見せつけられました。あと、彼が今まで培ってきた映像技術の粋が凝縮されています。戦争の実態、というより「戦闘」の実態を見せられました。

 にしてもなあ、そもそも戦闘機でもなんでも動かす動力燃料としての石油。これをアメリカに依存してたのに戦争を仕掛けるなんて、冷静に考えればうまくいくはずないじゃん、と思うのに。「戦闘」の実際、というのは、要は燃料をどうする、だの、爆撃機はいいけど、それを操縦する人材をどうするだの、その辺の瑣末なことが結構勝敗を分けるのね。日本は戦艦大和なんて、あんなバカでかい船をアメリカまで航海させるつもりだったんか?燃料は薪ですか?正気を疑っちゃうよ。

 しかし、アメリカ側の話を見ていると、いきなり真珠湾攻撃をくらって(ああいう描写ーおそらく実際こうだった、という映像でしょうーを観てて、自国の事ながら自分も腹たった。こんなやり口で攻勢をかけるなんて、ありえヘン)日本軍を狂犬集団のように捉えて怯えてしまう、というのは分かる。「リメンバー・パールハーバー」と、アメリカ人に実際に言われたこともあるのだが、この映像を見りゃ分かる。で、日本は原爆です。アメリカ側からすれば「仕返し」というわけで、それも分かる。結局お互い様、で、やられた事は忘れない、ということだよね。戦争のバカらしい後遺症はそこに尽きる気がする。

 あと、映像技術を駆使してこれでもか、と見せられた「戦闘」の実態。当時の「戦闘」はアバウトな海図を元にあれこれやってた、行ってみたら海しかない、相手がいないぞ、燃料をどうする、一方、それっと放った魚雷、当たったけど不発でした、とか。精度が低すぎ。けど今は冗談じゃないレベルで精度が上がっている。その技術でもって「戦闘」をやったら、まあ、人類全滅でしょうね。爆撃機のコックピットから見た風景もリアルで、怖かったです。

 で、いくら作戦を練っても、結局実行するのは末端の人達で、その人達が無駄に浪費されてゆくのもよく描かれています。アメリカ映画でそういうのの描写は初めて見たかもしれない。

 うーん、結局、日本はあの戦争でなにがしたかったんでしょうねえ?「大日本共栄圏」なんて勇ましいけど、現地の人を全然考えてる風じゃないし。のぼせあがってたのか。まあ、それはアメリカも同じですわね、日本をやっつけられたんだから、それ、ベトナムも、とやって大失敗。懲りずにイラクだあ、これも失敗。無駄過ぎる・・・。
 でも、その位戦争っていうのはとりわけ男どもにとっては魅惑的なんでしょうなあ。要注意です。

 この映画、「アルキメデスの大戦」を先に観ておくと、話が結構リンクするので分かりやすいと思います。ホントーに、当時の日本の男どもはバカだったんだなあ(まあ、今もそうだけどさ)ということがよく分かります。あーあ。

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P.S日本側の俳優陣、錚々たる人達です。

 







2020/07/08 21:44:02|映画 は行
はちどり
 絶対に観たほうがいい映画だと思います。

 ティーンの気持ちや揺れを描いている映画といえば、観た事あるのは「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」とか「海街ダイアリー」とか。「天気の子」もそうか。基本的にはあまり観たくない。いやなとこを突かれるので。今回もすごく嫌でした。でも、「マイライフ」は二度と観たくないと思ったのに、今回はそうでもない。主人公の女の子の小さい世界の波立ちが色々自分とリンクするのになあ。全然懐かしくもなんともないんですけどね。

 この映画、最初に1994年の話です、と断りが入ります。これを見て、自分は「オウムの地下鉄事件はまだ起きていない時か」と思ったんですが、韓国の方は、全然違う事を思いつく、んですね。それが映画の中で明かされます。社会の大きな事件と、彼女の小さな世界が交錯するのが非常にうまいです。

 それにしても、韓国も日本も同じだな〜〜、親の態度がさ。清水ちなみさんという、OL委員会なるものを作っていた方が出した本に「お父さんには言えない事」というのがあります。その本には、この映画と同じ頃、あるいはやや前頃に子供の立場にあった人達が父親からやられた「虐待全集」みたいになっている(その位、当時の大人は腹いせに自分の子供を殴ったり蹴ったりしてたってこと)んですが、清水さんご自身の話として、清水さんが大怪我をしたとき、彼女の父親は全く彼女を心配せず、彼女の乗ってた自転車のことばかり言ってたそうなんです。で、彼女がやっとこさ退院してきたとき、ほっぺたをひくひくひくつかせながら「いや〜〜今回はどうなることかと思ったよ」とだけ言ったんだって。清水さんはそれを見て、あー成程、この人って、「心配だ」とか「大丈夫か」とか、そういう言葉を言いたくても、言えない人なんだな、と理解して腑に落ちたと。そっくり同じような話が映画の中で出てきます。この言葉の不自由、どうなってるんでしょうね?いまだにそういう人って多そうだけど。
 
 自分は仕事をし始めてから、そういう、「言葉が栓されたみたいに出てこない」という経験があって、それは誰かを「褒める」事でした。なぜなのか、凄ーく考えて思い至ったのは「自分は褒められたことがない」だったんだよね。ショックでしたよ、あれは。下の世代をこういう目に遭わせたくはない。

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