シネマ日乗

入間アイポットのユナイテッド・シネマ入間で観た映画の感想が中心になります(多分)。 ネタバレになってしまう可能性も・・・・・・。 その辺、ご留意ください。
 
2013/10/28 23:34:01|映画 さ行
そして父になる
 なんか、感動した。

 20年近く前の話だが。親が1室持ってるマンション。管理組合の集金を幹部が使い込みしたんじゃないか、という事件が起きて、当時ちょうど回り持ちの管理組合長かなんかになってた父親が弁護士さんと一緒に右往左往していたんだけど。その弁護士さんのお嬢さんがエジプトで起きたテロ事件の犠牲になった、と聞いてビックリした覚えがある。確かに連日新聞で報道はされていたが、それに巻き込まれた人が身近にいる、というのは何とも言えない感じがして。
 その後、遺族の方々がエジプトに赴いて、その記念写真なるものが新聞に載った。同じ場所に同じ時間帯にたまたまいた、その結果、全く今まで知り合いでも何でもない人達が同じ問題に向き合うのはどんな感じがするものなのか、テロの現場でもあるピラミッドの前の「記念写真」に見入って考えてしまった。その写真は頭に刷り込まれてしまったようで、時々思い出してしまう。

 そういう事件に向き合わなければならなくなった2つの家族の話です。映画の最初は、家族間の格差みたいな説教臭い話なのかな、と思ったんだけど、全然違いました。

 観ながら考える。野々宮さんに凄く共感するんだ。そうだよね、そうそう!って。野々宮さんみたいな男の人って今でも多そうだよね。自分の父親みたいなこんな自堕落な奴になってたまるか!と思いつつ、物事に対する対応が結局同じ。クソまじめで気持ちのこわばりがほどけない。自分もそうだもの。このあたりは、現実にそういう事を経験していないと分かりにくいかもしれないが。

 で、一方では、自分の仕事から断言できるのね。血縁なんか大したことじゃないって。動物って、血縁もくそもないけど、皆さん大切にしちゃう。子供だってそうさ、きっと。

 この映画を観て、改めて、自分に子供はいないけど、それでよかった、と思う。なんか絶対に野々宮さんみたいになりそうだな、と思って。子供を直接育てるのに向いてないんですよ。その代わりと言ってはなんだが、子供を育ててる方の味方にはなれる。仕事を通じて、ささやかながらそれを続けているつもりなんですけどね。
 
 野々宮さんのとても偉い点は、そうしたご自分の欠陥を不器用ながら埋めようとなさるところ。これが、この映画の題名でもあり、テーマでもあると思います。それを10年続けたら、ヘンなお父ちゃんになれるよ!!とエールを送りたい。つくづく思うんです、物事は慣れだって。自分は全く親から褒められたことがない、から、褒め言葉がいつも喉に詰まってた。けど、一日100回言うぞ!!と決めたら、簡単に口に出せるようになりました。結局慣れだな、と、その経験から断言できるんです。

 この映画に出てくるピアノ曲。ブルグミュラーの曲は、ピアノをある程度まで習ったことのある人なら誰でも知っていると思う。こういう使われ方をするとは!!ゴルドベルク変奏曲も、グリーグの抒情小曲集もですが。使われ方が素晴らしいと思います。

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2013/10/11 17:11:00|映画 やらわ行
許されざる者
 オリジナルは観ていないんです。従ってストーリーも知らない、という状況で観たんですが。ストーリーを知っていて観たら、違う感想になるのかな。

 この映画は「間」が怖い。普通、映画に引き込まれる=次から次へ事件が起きて息つく暇なし、という手法が鉄板だと思う。「ドラエモン」も「ターミネーター」も、その辺は同じですよね。
 けど、この映画、とにかく間が怖い。二人が黙る、次に何が起きる?どうなる?という緊張感。途中で見たくなくなりそうになった位。こういう映画は初めて観る。その緊張感にずうっと晒されて、苦しくなりました。
 こうした間をつくれるのは、やはり役者さんの存在感*演出という事でしょうか。音楽が最低限というのも凄い。

 映画としての格が最上級クラスだと思います。映画にふさわしい風景、よくこういう場所を見つけたなあ、と、何回も驚いてました。役者さん達が一人一人きっちり生きている。これも凄い。どこにも無駄がない。遊びがなさ過ぎて、これもしんどい。子供の観る映画ではないな、と。

 元が西部劇、それを翻案した方法もぴったりはまってます。広々した荒野・開拓・馬・異民族、全部確かに北海道がふさわしい。ぜひ大画面で観るべし!!大画面じゃないと、あの風景を真に味わえないと思います。

 こうなるとオリジナルも観た方がいいか?いやあ、ちょっとしんどいので、しばらくして根性が入ったらにしよう。

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2013/10/06 23:17:00|映画 さ行
謝罪の王様
 クドカンのドラマ、一生懸命見たのは「タイガー&ドラゴン」。これは面白かった、けど、もしかすると、要するに元ネタの落語が面白かった、のかなあ?「あまちゃん」は見てないし。しかし、クドカンがらみの役者さん達はかなり好きな人が多いんです。阿部サダヲ、かなり面白い人だと思ってる。ポスト西田敏行かなあ?とか思っちゃって。で、この映画。

 上手いと思います。あちこちプロットが飛ぶように見えるんだけど、巧みに組み合わさって最後は大団円!となるあたり、上手いなあ〜〜〜、と。うーん、けど、笑いのツボが自分とはずれていた。残念!!です。

 笑いのツボって難しいなあ・・・・・・・。テーマが「謝罪」だからかなあ?

 おじさん達の謝罪って下手くそだなあって思う事が多いんですが(これは現実の話ね、ニュースとかでしょっちゅうやってる奴)、今までで一番、これは上手い、こじれそうもないな、と思ったのはジャパネットタカタの高田社長。大体ちゃんと謝られると、基本忘れちゃいますよね。それを外すから、いつまでたっても被害者側が覚えてるわけで。そこらへんの話が、この映画では一番リアルで、どうにも笑えなくなっちゃったんですよ。

 にしても、「東京謝罪センター」ってありそう。「土下座」で検索してる人、マジでいっぱいいるかも!!

 そうそう、謝罪会見でいつも不思議に思う事。こないだもみずほ銀行の副頭取(だったか?なんで頭取じゃなかったんだろう)の謝罪会見で、頭を下げると途端にフラッシュの雨あられ!!!ってなる。でも、その写真が新聞に載る事って滅多にない。なのにどうして撮影するのかなあ?


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PS.この映画、最後になぜかどこかの歌手グループのPVが延々と続くんですけど。これ、何のため?見てて、阿部サダヲが一緒に歌って踊るんかなあ、と期待してたのに、結局最後までなにもなくてガッカリ。出演者の皆さんが歌って踊って、なら分かるんだけど。PVを出してる意味がちっとも分かりませんでした。これは明らかに映画の格を落としていると思います。







2013/09/29 23:34:10|映画 あ行
ウルヴァリン:SAMURAI
 「X-MEN」のシリーズは観た事ないんですよ。今回は、やっぱり日本が舞台だということ&真田さんのアクションを見たい、という理由で観たわけですが。

 真田さんもいいんですけど、驚いた&とても嬉しく感じたのは全然別の点。

 女性が二人、どちらも実に凛々しい。一見お嬢様も、自立し、一人で問題を解決しようとする実力と根性がある。まさに「大和撫子」!!こうした日本女性の現代的なヒロイズムをきちんと描いているのは「下妻物語」以来かも。っていうか、どーしてアメリカ映画になっちゃうかなあ・・・・・・・。日本の男は女が怖いのか??

 福島リラさんも、TAOさんも、「目力」が凄い。これは、「ラスト・サムライ」でも感じた事ですけど。ちょっと惚れちゃいました。ウルヴァリンがいなくても、なんとかなったかもね、あの二人なら。

 話は二転三転します。思いがけない黒幕が出てきてビックリ!!ちょっとここまでは読めなかった。で、かなりまっすぐな映画で、そこも好きになりました。新幹線アクションは、ぜひ大画面で!!凄いよ〜〜〜〜!!!

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2013/09/09 23:43:00|映画 か行
キャプテンハーロック
 「風立ちぬ」が大騒ぎ。意地悪い言い方をすれば、世界遺産になった直後の観光地みたいな有様になってるようだ。
 しかし、日本のアニメーションはジブリだけじゃない。ので、この映画。何カ月も前から公開を楽しみにしてました。封切り日に観に行ったのは、本当に久しぶりのような気がする。

 フルCGアニメ、今まで観たのは「アップルシード」と「ファイナルファンタジー」。どちらもピンとこなかった。どうしても「つくりもの感」から抜け出せない感じがして。で、この映画はどうだろうか?
 とにかく、まずは映像に圧倒されました。

 最初に観たのは3D。映像に振り回されて、話に追いつけなかったので、次は2Dで。こんな短い間隔で観たのも久しぶりかも。2回観て、この映画の全貌がややつかめてきたかもしれない。しかし、これは、もう数回観ることになりそうだ。

 最初に観た時は、これは主人公はハーロックじゃないな、と思ったんです。ヤマかな、あるいは、周囲のいろんな人達の群像劇、とでもいうべきか。2回目に観て、やっぱりハーロックが主人公なのかな、と。印象が異なるのはなぜか、セリフが少ない上に一つ一つが意味を持つ。ちょっと聞き逃すと次の話にたどり着けなくなる。高い集中力が求められます。こんなにセリフから無駄が削ぎ落されているのも珍しい気がする。2回観てみて、聞き逃したセリフがパズルみたいに入ってきて、見えてきたものがあるんですね。

 松本零士作品は、もうね、自分はピタッとはまってる世代なわけです。ハーロックは誰もが憧れる人物だったんじゃないかと思う。この映画のハーロックは、そうした「理想的な人物」ではない。非常にしんどいものと向きあったり、逃げたり、といういってみれば「普通の人」だ。普通じゃない部分もあるわけだが、そうなりたくてなったわけでもなさそう。そこら辺が、一回目は違和感があったんですが、2回観て、その違和感が腑に落ちて、かなり感動しました。

 「るろうに剣心」でも思った事なんだけど、この映画でも、登場人物の誰もが、自分の信念に基づいて動く。ので、簡単に「善VS悪」という図式にならない。単純な構図を考えているとイライラするかもしれない。しかし、その複雑さが、それぞれの人物に陰影を与え、CGでありながら一人一人がきちんと「生きて」動き、語る。単にCGアニメの技術革新のせいでそうなるわけではない。これには驚かされる。

 それぞれの語りがいいです。アニメに言葉を吹き込んでいる方々の熱が伝わってくるようだ。きちんと聞き取れる、という基本もできている。ジブリ映画、申し訳ないが、声優じゃない人が話すセリフが全く聞き取れなかったことがあって。「もののけ姫」とか、ひどかったもんなあ。「風立ちぬ」も、そこに問題あり、という話が聞こえてくる。そこんとこだけでもう、観に行く気がなくなっちゃうんですよ。
 この映画、一回じゃ聞ききれなかったのは、セリフが聞き取れなかったせいではない、のが2回観て分かりました。明確に語られ、説明されている。無駄がないから、ちょっと取り逃がすと追いつけなくなりがちになるだけです。

 観ながら、福島やチェルノブイリの事を考えていました。結局のところ、問題は正面突破するしかない。その方法を模索し続けるしかない。その摸索を語る映画です。必見と思います。

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