「風立ちぬ」が大騒ぎ。意地悪い言い方をすれば、世界遺産になった直後の観光地みたいな有様になってるようだ。
しかし、日本のアニメーションはジブリだけじゃない。ので、この映画。何カ月も前から公開を楽しみにしてました。封切り日に観に行ったのは、本当に久しぶりのような気がする。
フルCGアニメ、今まで観たのは「アップルシード」と「ファイナルファンタジー」。どちらもピンとこなかった。どうしても「つくりもの感」から抜け出せない感じがして。で、この映画はどうだろうか?
とにかく、まずは映像に圧倒されました。
最初に観たのは3D。映像に振り回されて、話に追いつけなかったので、次は2Dで。こんな短い間隔で観たのも久しぶりかも。2回観て、この映画の全貌がややつかめてきたかもしれない。しかし、これは、もう数回観ることになりそうだ。
最初に観た時は、これは主人公はハーロックじゃないな、と思ったんです。ヤマかな、あるいは、周囲のいろんな人達の群像劇、とでもいうべきか。2回目に観て、やっぱりハーロックが主人公なのかな、と。印象が異なるのはなぜか、セリフが少ない上に一つ一つが意味を持つ。ちょっと聞き逃すと次の話にたどり着けなくなる。高い集中力が求められます。こんなにセリフから無駄が削ぎ落されているのも珍しい気がする。2回観てみて、聞き逃したセリフがパズルみたいに入ってきて、見えてきたものがあるんですね。
松本零士作品は、もうね、自分はピタッとはまってる世代なわけです。ハーロックは誰もが憧れる人物だったんじゃないかと思う。この映画のハーロックは、そうした「理想的な人物」ではない。非常にしんどいものと向きあったり、逃げたり、といういってみれば「普通の人」だ。普通じゃない部分もあるわけだが、そうなりたくてなったわけでもなさそう。そこら辺が、一回目は違和感があったんですが、2回観て、その違和感が腑に落ちて、かなり感動しました。
「るろうに剣心」でも思った事なんだけど、この映画でも、登場人物の誰もが、自分の信念に基づいて動く。ので、簡単に「善VS悪」という図式にならない。単純な構図を考えているとイライラするかもしれない。しかし、その複雑さが、それぞれの人物に陰影を与え、CGでありながら一人一人がきちんと「生きて」動き、語る。単にCGアニメの技術革新のせいでそうなるわけではない。これには驚かされる。
それぞれの語りがいいです。アニメに言葉を吹き込んでいる方々の熱が伝わってくるようだ。きちんと聞き取れる、という基本もできている。ジブリ映画、申し訳ないが、声優じゃない人が話すセリフが全く聞き取れなかったことがあって。「もののけ姫」とか、ひどかったもんなあ。「風立ちぬ」も、そこに問題あり、という話が聞こえてくる。そこんとこだけでもう、観に行く気がなくなっちゃうんですよ。
この映画、一回じゃ聞ききれなかったのは、セリフが聞き取れなかったせいではない、のが2回観て分かりました。明確に語られ、説明されている。無駄がないから、ちょっと取り逃がすと追いつけなくなりがちになるだけです。
観ながら、福島やチェルノブイリの事を考えていました。結局のところ、問題は正面突破するしかない。その方法を模索し続けるしかない。その摸索を語る映画です。必見と思います。
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