最初2D字幕版で観たんですけども、特に前フリの短編が、こりゃどう考えても3Dを意識して作ってるよね、という作品だったので、3Dを観たかったんです。拡大上映されてアイポットに来てくれたのはラッキー!!
この作品の命は映像&歌なんですが、映像はもうね、3Dで観るとその良さがよく分かる。ディズニーのアニメ作画の技術って凄い。特に氷の表現がね、なんかもうリアルで。主人公の女の子二人の表情がクルクル変わるのも楽しい。こないだWOWOWで「バンビ」や「シンデレラ」なんかやってましたけど、「バンビ」を見て感じた、動物の動きの生き生き感からの伝統なんでしょうね。
で、この映画は吹き替えが完璧に成功している稀有な例じゃないかと思うんです。特にアナ役の神田沙也加ちゃんが素晴らしい。ただ吹き替えてるんじゃなくて、声も歌も生きてるんですよね。松たか子さんの歌が話題になってるけど(これも本当に素晴らしい)、セリフや歌の量はアナの方がうんと多いから、神田さんがきっちり演じてこその映画なんですけど、彼女はそれに十二分に応えています。ミュージカルでここまで凄い吹き替え映画は初めてじゃないだろうか?
歌の訳詩が巧いんです。英語の元歌のエッセンスをうまく取り入れながら(話がちゃんと分からないと、ミュージカルとして成り立たないものね)、歌っている人の口の動きに合わせなくちゃならない、かつ、歌える歌詞にする、難題だったと思うんだけど。というのも、アニメーションなのに、人物の口の動き方が、ただ「口パク」っていうんじゃないんですよ。ちゃんと、英語のセリフに合わせてこういう母音で歌ってますって分かるんです。これも凄い話だと思うんだけど。それに合わせた歌やセリフを作って、音域なんか、かなり難しい曲だと思うけど、歌って命を吹き込む、本当の「吹き替え」になってました。
じゃあ、物語はどうか、というと、これが結構シビアだなあ、と。基本的には、社会性が全然ない(その事情はそれぞれなんだけど)女の子が、それぞれの経験を経て、一人前になる、というお話なんだけど、裏テーマに思えたのが「口のうまい奴に気を付けろ」かなあ。うん、10代女子は観た方がいいですよ。ところが、今日の客層は、シニアのおばさんばかり。それと、おそらくはつき合わされたおじさん、というか、じいさん軍団。なんか、異様な客層・・・・・・。この人達、失礼ながら、この映画から何を感じたのかな?
だってさ、今の日本のシニアおばさんたちって、自分じゃ何もしようとしないしできないし、人の世話ばっかり焼いてて、で、愚痴と文句と嫉妬が脳みその大半を占めてる、という感じなんですもん。この映画に描かれている「まっすぐ」感から一番遠いところにいる気がするんだ。だから、おばさんたちの感想をぜひ聞きたかったんですけどね、ついでにおじさん達の感想も。なーんか、3Dに酔った、なんて話が聞こえました。こちらは映画じゃなくて、客に酔ってしまった。この映画に共感しそうな客の皆さんと一緒に観たかったっす。
公式サイトP.S 大騒ぎになっているPC遠隔操作事件の犯人、あの片山っていう頭のきれるバカ男を弁護している佐藤氏が、今日の記者会見の中でこの映画の感想を述べておられる。この映画から一番遠そうな人の感想を知ることができた。で、その内容に驚いている。エルサのキャラクターについて、どう捉えたらいいのか、と思ってたんですが、明確な回答を得られた気がします。この人も、とことんプロですね・・・・・。
記者会見P.S2
この映画について、別の評論が出ました。著者はコラムニストの中森明夫氏。この評論の面白いところは、中森氏が「中央公論」から依頼を受けて書いたのだが、なぜか掲載を拒否されてしまったということ。中森氏はその顛末を今日の毎日新聞夕刊に暴露したわけなんですけど。
この映画は、とにかくいろんな人にものを考えさせる力を持つようだ。一人一人の感想が全然違う(しかし、いずれもこの映画の核心を突いている気がする)から、どの論評も面白くて、ついつい真剣に読んだり聞いたりしてしまう。この評論については、中森氏がなんだか熱く語っていて、それに中央公論が恐れをなした、という印象。なんだなんだ中央公論、しっかりしろっての!!
この評論は完全ネタバレです。映画を観ていない方は読まないでください。
中森氏の評論