イオン日の出モールで観る。ずうっと観たくてしょうがなくて、ようやく観れた。
もしかすると、今年1番の映画になるかもしれない。
福本清三さんを知ったのは「ラストサムライ」だけど、その前から気になる人ではあった。名前が分からないもんで、謎の人だったわけです。確か「暮らしの手帖」の読者投稿コーナーだったかな?「ノーズシャドウの彼」とその方は書いてらした。いつもいつも時代劇の悪役で斬られるばかりなんだけど、どうも気にかかる、その人はそのうち、うらぶれたムードを更に強めるためなのか、ノーズシャドウを塗って画面に登場するようになった。しかし役名すら付かない役ばかりで、出演者のエンドロールを見ても誰なのか全く分からない、仕方なく「ノーズシャドウの彼」と名前を付けて見入っているうちに、とうとう手が画面に映っただけで「彼だ!!」と見分けがつくようになってしまった・・・・・・。こんなような話だった、確か。
「ラストサムライ」で、よくもまあこの方をキャスティングしたものだ、と思う。ハリウッドの眼力も捨てたもんじゃないですよね。あの時の身のこなし、立ち居振る舞い、セリフは一言だけだったと思うけど、印象が強くてよく覚えている。
その福本さんが主役を演じられた映画です。というか、福本さんご自身の変形のドキュメントのようなもの、ともいえる。描かれている「時代劇」をめぐる状況の変化や、大部屋役者制度の変質みたいな話は、全て事実だし。
観てて感嘆していた。カメラワーク・照明・美術・役者陣・音楽・すべてが素晴らしい!!
カメラが主人公に寄り添うように、滑るように動いてゆくシーン、影を使った障子の演出、時代劇を知る往年の役者陣、その中で、淡々と状況を受け入れてゆく主人公を、福本さんが演じている、といより、生きている感じがするんです。うん、ある意味「演じて」はいらっしゃらないなあ、福本さんご自身が映し出されているというか。
で、福本さんを囲む俳優陣、凄い人たちばかりなんですけど、その方たちが実に丁寧にそれぞれの役を演じておられます。なんというか、愛情が溢れているんですね。
で、この映画は、別の方向から見ると「映画を作るって大変だけど、いいよね」という映画愛ムービーでもあるんですね。「アメリカの夜」みたいな。太秦スタジオが舞台なんだから当然とも思うけれど。それにしても、この映画を通して、改めて日本の「時代劇」の世界というのは一種の演技文化であり、映像作成文化でもあり、演出技術なんかも含めて、廃れさせちゃっていいんですか?という危機感を感じてしまう。絶滅危惧種みたいな扱いではいけないとは思うんだけど・・・・・・。
「るろうに剣心」のシリーズについて「剣戟アクション映画」と書いたけど、るろうにのシリーズは、時代劇とは別ジャンルだと思うんですよ。様式美を伴う「殺陣」ではないから。今回は松方弘樹さんの殺陣を久しぶりに観て堪能しましたが、歌舞伎のような、一種独特の型がつくる美しさなんですよね。
この間福本さんのインタビュー番組を見ましたが、福本さんはいろんなスター俳優の殺陣をすべて覚えていらっしゃるようなんです。殺陣は映像美で、例えば田村正和の殺陣なんか、実際にはああは斬れっこない、筈なんだけど、田村さんがやるからカッコよく決まって見える、という話は実に興味深いものがありました。
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