シネマ日乗

入間アイポットのユナイテッド・シネマ入間で観た映画の感想が中心になります(多分)。 ネタバレになってしまう可能性も・・・・・・。 その辺、ご留意ください。
 
2017/12/18 22:19:00|その他
おんな城主 直虎
 大傑作、じゃないかと思う。「平清盛」を超える作品になったかもしれない。

 主人公の井伊直虎という人は、NHKの「ヒストリア」で紹介されて、その時の反響が大きくて、じゃあ、思い切って大河ドラマにするか、ということなんだそう。この人を紹介した回は見ていたので覚えているが、確かに印象的なお話だった、が、領主になっていた時期はたったの3年だし、どのようにしてドラマ仕立てにするんだろう、と不安になりつつ観始めたんです。女性が主人公の大河ドラマは、途中でつまんなくなってやめちゃうことばかりだったし。

 なのになあ、ドはまりしちゃったわけだ。

 このお話のテーマは、自分の人生を責任もって生きるとこうなる、という事じゃないかと思っている。起こる事象に対して判断し、決断し、実行し、その結果を受け入れて、次に生かす。この繰り返し。実は、大概のお話は、このスパイラルのどこかが抜け落ちちゃうんですよ。女が主人公の場合、「判断」が抜けたり「行動」が抜けたり。誰かの判断に翻弄されてお終いとか。行動できずじまいとか。そうでなければ結果がいつも大甘で、次がない。男が主人公だと大体「実行」までで、その結果が出ておしまい、と。このドラマはそのスパイラルを延々と見せた。それが、自営業者の自分としては、極めてリアルに感じられたんです。これは脚本の力が大きい。毎回感服してました。

 このドラマでさらにすごいと思ったのは、ミスキャストがなかったこと。端役に至るまで、全員が、ああこの人だな、と分かる。脚本の力量はそこにも現れていて、短い出演でも、ああ、こういう人、と理解できるのだが、それを体現する役者さん達の理解が深いんです。純然たる悪役が現れなかったのにも驚いた。スターウォーズに「真実は多面的なものだ」なる台詞があるのだが、それを体現しているような。脚本を書いた森下さんは、登場人物を全員大切に思っていたんでしょうね。それが役者さんに伝わるから、全員が役を大切に演じたんだと思う。そういうのが「愛情」という奴でしょう。

 それ以外でも、この大河ドラマは従来のドラマに対するアンチテーゼがポンポン出てきて、とにかく痛快でした。やたら出てきた男性諸氏の褌カットやら半裸シーン。これはねえ、女性陣の目の保養目的なんでしょうけど、従来のドラマでは男性陣の目の保養シーンばかりだったもんねえ(水戸黄門の由美かおるさん入浴シーンとか)、大笑いでしたよ。三浦春馬さんは「スケコマシ」だし、政次さんは奸臣に見せかけてた人で、築山殿は悪女ってわけじゃない、という解釈のひっくり返しも見事。だから、見ている側は史実はこう、と分かっていてもドキドキしちゃうんですよ。

 このドラマを観ながら、あーこういう楽しみ方があるのか、と驚いたのがツイッター。今までツイッターって一体何のために使うの?と不思議でしょうがなかったんですが。ドラマの感想を次々書き込む場所だったんですね。で、それが実に的を得ている。えーここまで見ているの?と思うような指摘を読んで唸ること多し。それだけじゃない、「虎絵」と称して登場人物の絵とか、さらにはスピンオフストーリーを漫画で描いちゃったり。それもどうやら「いいね」が欲しくて描いているわけじゃなさそうなのだ。ドラマの受け手の反応の確かさ。これは、製作陣を大いに励ましたのではないかと思う。いやらしい批判や中傷を出させなくしちゃうような迫力があって。その為か、ドラマの各話が訴えかけるテーマも毎回厳しいものが増えましたね。で、それに見ている側ががっちりついてゆく。それがリアルタイムで分かる、本当に面白かったし、ある種感動してました。いいものを見させてもらった。

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P.S 昨日総集編がありまして。そういえばと思い出した事。このドラマは効果音や音楽の使い方が実にうまい。最初の頃は気付かなかったくらい。特に鳥の声。劇中、やたらカラスの声が聞こえて、なんだろこれ、と思ってたんですが、よく聞いてみると、実はこれが効果音として、登場人物の心情等々を表していたんです。音楽も、よくまあ、と思うような音を付けてくる。万千代君の登場と同時に出てきたエレキギターのテーマ曲、あれ、よかったわあ〜。音楽は下手をするとドラマや役者さんたちのお芝居の邪魔をしかねない時もあるので、それが一切なかったというのは凄い事です。 







2017/11/26 19:58:00|映画 やらわ行
ローガン・ラッキー
 悪事がテーマなのに映画を通じて銃が全く出てこない、のはアメリカ映画では珍しいかも。

 ローガン家はついてないことばっかり。「ローガンの呪い」とか何とか言ってしょぼくれてるんだけど、それを一発逆転しようじゃない!で、その手段としてF1レース会場から現金強奪しようじゃーん。仲間を募って、うまいことアリバイをつくって、現金盗んでもアシがつかないように・・・・。ってそううまくいくのかねえ?というお話。
 ローガン家の人達は、カネがなくて、車にはナビも付けられないし、ケータイも契約を切られちゃってる。それが面白い伏線になっています。

 面白いかというと、うーんどうだろう?話がガチャガチャ進むので、どの辺が計画通りでどの辺がラッキーなのか、今ひとつわからず。ダニエル・クレイグはいい味出してました。ホンット悪そうなんだよね〜〜。

 思いがけない役でヒラリー・スワンクが出てます。彼女がほっぺたをひくつかせるのが、なかなか〜。で、髪を下すと美人さんです、相変わらず。

 この映画はしかし、アメリカの現実をちょこっと見せてくれるんです。ローガン家の人達は、要するにアメリカ社会の最下層。お兄さんはちょっと足が悪い、だけで工員をクビになっちゃう。弟はイラクに従軍して片腕をなくしちゃう、それを小ばかにされる。そういうのはかつてはベトナムでしたけど、イラクに変わったわけね。アメリカと戦争というのは、いつまでも縁が切れないんだなあ。
 一方、F1レーサーのような最上層の人達は、食事だのヨガだの、「自分を整えて〜〜」みたいなことにカネを注ぎ込む余裕があるわけだ。その対比が、映画の中で光ります。

 劇中で「カントリーロード」という有名な歌が歌われます。このお話はバージニア州が舞台で、それが関係するのだけど、この曲自体は「耳をすませば」にも出てきましたね。「耳をすませば」から察せられる英語の1番目の歌詞は、故郷を懐かしんでるようだけど、なんと、この歌には2番があるのだ。実はこの歌は、故郷が懐かしい、という歌じゃないんですよ。1次産業従事者の悲哀を歌う歌なんです。驚きました。

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2017/11/05 19:37:00|映画 は行
ブレードランナー2049
 この監督さんの「メッセージ」を見逃したのはつくづく残念〜〜。観たかったんですけど、当時咳がひどくて映画館で観る、のはヤバそう、という判断になっちゃって。
 こないだも咳が出てしょうがなかったんですけど、龍角散を飲んだら治った。前回もとっとと龍角散を飲んでりゃよかった・・・。

 さて、「ブレードランナー」という映画がありまして、その続編になります。「ブレードランナー」は1回だけ観た。この映画は公開された時は鳴かず飛ばずで、その後ビデオ化されてからものすごく評価が上がったという不思議な作品なんですよね。思い出してみると、えーとやっぱり映画館だったかなあ。。。復活上映&ファイナルカット版的なものだったような。。。
 当時、この映画の感想は「やたら雨が降るなあ」というもの。SF設定を借りたハードボイルドサスペンスと解釈した気がする。もっとも、SFというか、未来社会の設定がぶっ飛んでるし、「2つで十分ですよ」というおじさんが妙に印象強くて。。。
 今、渋谷を歩いたりすると、ビルに引っ付いてるスクリーンなんかが、まんま「ブレードランナー」だなと。映画のシーンが頭にこびりついたままになってるのだから、相当なもんです。

 で、この映画。前を知ったうえで観たほうが、多分分かると思う。「ブレードランナー」ってなんなのさ、なんですが、危険な場所に人の代わりに行くような任務に就かせる、一種のヒューマノイド型アンドロイドを「レプリンカント」という、そのレプリカントは人と同じ姿をしていて、人より優れた能力も持ってる、が、寿命は4年(だったっけ?)。このレプリカントが人に紛れ込んで逃げたり、反乱を起こしたりするから、それを狩り出す人間が「ブレードランナー」と呼ばれる賞金稼ぎ、というわけ。デッカードというブレードランナーが主人公で、これが前作。今作は、レプリカントを狩り出すのは警察官で、かつその警官自身もレプリカントなんですね。このレプリカントは寿命制限がかかっていない、が、作るのに手間暇かかるから、製造会社側は「繁殖」するタイプを製造したがっている。この辺がもう、歪んでますわね。
 ことの発端は、「繁殖」したらしいレプリカントが見つかった所から。その子供はどこにいるのか?という話がどんどん転がっていく、のですね。映像も凄いんですが(どこで撮影したんだ?)音がね、とにかく不快なんですよね。

 ところで、「ブレードランナー」の原作は、フィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」。原作で語られている近未来の地球は超ド級の格差社会になってるんです。ボロボロで住めないから、ほぼ月にみんな移住しちゃってて、地球にいるのは「あえて地球に残っていられる」超セレブと「地球から出ることもできない」ド貧乏、となってる。超セレブは動物を飼うのがステータスなんです(動物もほぼ絶滅しちゃってるから)。貧乏人は自分も超セレブを気取りたい(地球なんかいつでも出ていけるけど、あえてそうしてないんだよ〜と見せたい)もんだから、動物を飼いたい、しかーし、飼えるわけないから、やむなく電気動物を飼うんです。電気動物は一見ホントの動物そっくりなんだけど、やっぱ時々故障する、それを直す修理屋が「獣医」として、「獣医の往診カー」そっくりの車に乗って現場に行くのだ。
 この映画に「生きてる馬いらんか?」って出てきたり、ミツバチや犬を見て「本物なのか?」といぶかしむ、あるいは、孤児院の惨状なんかは原作の裏設定が前提なんです。

 ということで、この映画もやたら雨が降るんですが・・・・・。原作の設定を踏襲して、かつ前作をしっかり受け継いだ正統派の続編だと思います。結局、主人公は大きな話には乗らず、小さな事に命を懸ける。そこはいいなあ、と。しかし、好き嫌いは分かれるだろうな〜〜。自分的には、サスペンスは前作に及ばない感じがするんですよ。どうなんでしょうか?
 あと、更に続編を作るのは、カンベンしてください。ただのアクション映画になり下がる可能性大だもの。

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前日譚 「ブレードランナー2022 ブラックアウト」

PS.この映画のストーリーなんですが、どこかデジャヴ感がありまして。なんだったっけ?やっと思い出したのが、萩尾望都さんの「マージナル」。率直に言って、「マージナル」の方が同じテーマのお話としては上です。「マージナル」を映画化できないものか?
上だと思う根拠。この映画は、結局ケンカして決着付けようぜ、みたいな話に落ちちゃってるんですよ。アメリカ映画の限界かなあ?「マージナル」はそうではない。未来を語る時、ケンカ抜きで先が開かれてる感じが上だと思うんです。







2017/11/01 16:23:00|映画 あ行
アトミックブロンド
 イオンシネマ日の出で観る。シャーリーズ・セロン大活躍です。

 この映画で面白いのは、時代背景がちょうどベルリンの壁が壊れるという、まさにその時をバックにしつつ話が進んでいる点。ベルリンにあちこちの国のスパイが集まってすったもんだしている、その内容は、冷戦の残りかすのような機密の取り合いなんだけど、それとは全く関係なく歴史が動いてしまう、というお話なんです。そこら辺が、時々流れる(登場人物が見ている)ニュースでもって分かるようにする、というお話の組み立ては巧いです。

 もう一つ、このお話の特徴なんだけど、セロン演ずるロレーンが任務を終えてMI6に帰って来て、で、尋問されて、こうだったって報告する、という筋立てなんですね。ので、どこまでが本当で、どこからが嘘っぱちなのか、が混線する。ロレーンの任務は2つあるらしくて、一つ目は機密リストの奪還、もう一つは機密リストに記されてるダブルスパイの正体を暴くこと、なんですけど、結局どっちもうまくいってないし。で、彼女が動くたびにそれが察知されてドンパチとなる。なぜだ〜〜?っていうのがお話のキモかな。その辺のアクションは相当なものです。

 なんだけど、話が彼女の視点からしょっちゅう逸脱するので、筋を追うのはやっかいでした。回想に基づく報告を映画にしてるんだから、そこがぐらつくと訳分からなくなる、と思うんだけどなあ。男がみーんなひげ面で、見分けるのが大変だし。最後にまーたどんでん返しがあるんだけど、必要なんでしょうかねえ?ますます分から〜〜ん、となっちゃって。

 ということで、映像とアクションを楽しむ映画、という感じになるんじゃないかと思います。シャーリーズ・セロンのファッションもなかなかナイスです。当時の街並みもよく再現されてて、一体どこでロケしたんだろう?と。

  かつて「ベルリン・天使の詩」を観た頃、ベルリンの壁って、なにやっても壊れないような気がしていた。のに、それから数年後あたりであっけなくぶっ壊れちゃった。そういう歴史を目の当たりにした当時は、ただポカ〜〜〜ン、としていたような。その辺が映画の中のニュース映像のおかげで若干見えたような気がするのが収穫かもしれません。

 ロレーンはMI6のスパイなんだけど、MI6ってば、ボンドだよねえ。自分的にはバンコラン少佐なんだけど。

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PS.イオンシネマ日の出はすべて券売機になってました。で、イオンのポイントが付くんですよ。知らなくてポイントカード持っていかなかったので、なんとなく損した気分。次回行くときは持って行きましょう。







2017/10/18 18:18:56|映画 は行
僕のワンダフル・ライフ
 久しぶりです。で、この映画。動物ものはあまり観ないことにしているんだけども、監督がハスルトレムさんだから・・・・。

 ラッセ・ハルストレム。色々観てる。最初は「ギルバート・グレイプ」。で、「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」。あとは「シッピングニュース」とか「ショコラ」とか「サイダーハウス・ルール」とか。最近だと「砂漠でサーモンフィッシング」。うーん、最近はテーマが甘くなっちゃってるなあと思う事が多いんです。かつてはシニカルなお話が多くて、その辺のバランスがいいのが「ショコラ」という感じだったんだけど。この映画はどうか?予告編では大甘に思えたんだけど、いや〜〜そうでもなかった。
 
 犬がいいです。犬の躍動感のある動きが、よく撮影できたなあ〜〜と感心するくらい上手くとらえられてる。犬が本気で走ると、カメラで追うの、大変だと思うんですけども。比較的上映時間が短いので、その中で犬*3代記を描けるのかしらと不安だったんだけど、これも巧くまとまってます。で、犬の目を通して、家族の問題があぶり出されてくる。これはですね、仕事柄、あるあるの話が多くて、色々考えさせられた。家族間に起こる事に、犬や子供は振り回されるんですよね。トラブルのしわ寄せが弱い側にどっと押し寄せる。この映画の中では、獣医はその防波堤になっていない。自分の仕事としては、そこをなんとかするようにしているので、獣医が頼りないぞ!と思って若干イラつくんですけど、これもねえ、50年前とかじゃあ、ほぼやれることがないんですよ、医者っつっても。

 ハルストレム監督が繰り返しテーマとしているものに、「男性のあり方」みたいなのがある。この映画の主人公は、アルコール依存症になってしまった父親みたいになりたくないから、人を遠ざけてしまう、というのは、結局父親と同じ事をやってるわけなんだけども、じゃあどうすればいいのか分からない。そこら辺が動くのに、時間とタイミングと、犬が必要だったんです。その辺は甘いと言われるかもしれないけど、いいお話だなあと思います。

 で、最後に大変気になったのは、途中の犬生に出てきた警官のおじさん。ああいうタイプの人って、自分は救われないんだよなあ。。。。。この方の人生がよきものになっていてほしいな、と思いました。

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P.S ロバが最初と最後に出てくるんだけども、同じロバとされてます。そりゃそうで、ロバってすごーく長生きするんです。だから、間違いではない。あと、犬が飲み込んじゃう金貨の大きさですが、飲んだ犬のサイズからみて、まず腸閉塞を起こしてしまいます。うまいこと出てくる、という事はほぼない。ああいう場合には、無理やり口から出そうとするから飲み込んじゃう。他のもっと旨い奴と交換という事にすると、割と取り戻せることが多い。口から離す、という躾はかなり難しいのですが、できれば教えておきたい。映画の中で「持って来い」遊びがかなり出てきますが、それを使って教えるといいかもしれません。