ローランド・エメリッヒ監督といえば「インディペンデンス・デイ」に代表される、なんか上手い事行き過ぎの大味&しかし映像は凄い、という映画を連想しちゃうんですが。そこからかけ離れた作品です。エメリッヒさんは、この作品を撮るために米国礼賛大味映画をつくってたんかなあ(で、ハリウッドの支持を得、お金も得た)と考えてしまった。
エメリッヒ作品はしかし、以前から結構生き死にについては容赦ないところがあると感じていましたが、今回はそれを存分に見せつけられました。あと、彼が今まで培ってきた映像技術の粋が凝縮されています。戦争の実態、というより「戦闘」の実態を見せられました。
にしてもなあ、そもそも戦闘機でもなんでも動かす動力燃料としての石油。これをアメリカに依存してたのに戦争を仕掛けるなんて、冷静に考えればうまくいくはずないじゃん、と思うのに。「戦闘」の実際、というのは、要は燃料をどうする、だの、爆撃機はいいけど、それを操縦する人材をどうするだの、その辺の瑣末なことが結構勝敗を分けるのね。日本は戦艦大和なんて、あんなバカでかい船をアメリカまで航海させるつもりだったんか?燃料は薪ですか?正気を疑っちゃうよ。
しかし、アメリカ側の話を見ていると、いきなり真珠湾攻撃をくらって(ああいう描写ーおそらく実際こうだった、という映像でしょうーを観てて、自国の事ながら自分も腹たった。こんなやり口で攻勢をかけるなんて、ありえヘン)日本軍を狂犬集団のように捉えて怯えてしまう、というのは分かる。「リメンバー・パールハーバー」と、アメリカ人に実際に言われたこともあるのだが、この映像を見りゃ分かる。で、日本は原爆です。アメリカ側からすれば「仕返し」というわけで、それも分かる。結局お互い様、で、やられた事は忘れない、ということだよね。戦争のバカらしい後遺症はそこに尽きる気がする。
あと、映像技術を駆使してこれでもか、と見せられた「戦闘」の実態。当時の「戦闘」はアバウトな海図を元にあれこれやってた、行ってみたら海しかない、相手がいないぞ、燃料をどうする、一方、それっと放った魚雷、当たったけど不発でした、とか。精度が低すぎ。けど今は冗談じゃないレベルで精度が上がっている。その技術でもって「戦闘」をやったら、まあ、人類全滅でしょうね。爆撃機のコックピットから見た風景もリアルで、怖かったです。
で、いくら作戦を練っても、結局実行するのは末端の人達で、その人達が無駄に浪費されてゆくのもよく描かれています。アメリカ映画でそういうのの描写は初めて見たかもしれない。
うーん、結局、日本はあの戦争でなにがしたかったんでしょうねえ?「大日本共栄圏」なんて勇ましいけど、現地の人を全然考えてる風じゃないし。のぼせあがってたのか。まあ、それはアメリカも同じですわね、日本をやっつけられたんだから、それ、ベトナムも、とやって大失敗。懲りずにイラクだあ、これも失敗。無駄過ぎる・・・。
でも、その位戦争っていうのはとりわけ男どもにとっては魅惑的なんでしょうなあ。要注意です。
この映画、「アルキメデスの大戦」を先に観ておくと、話が結構リンクするので分かりやすいと思います。ホントーに、当時の日本の男どもはバカだったんだなあ(まあ、今もそうだけどさ)ということがよく分かります。あーあ。
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