| 7月の終わり、さいたま市で盲導犬の「オスカー」がご主人の男性を仕事場まで送り届ける途中、何者かに刺される事件が発生しました。
入間市内には盲導犬と一緒に生活をしている方が3人いらっしゃいます。 事件を受けて、その1人である志賀信明さんにインタビューしました。
● トリトンとの出会い 私が全盲になったのが42歳の時です。 それから約7年間、白杖をついて歩いていましたが、ぶつかったり転倒したりと仕事自体よりも通勤にかかる精神的ストレスの方が大きくなりました。 これでは外に出るのがいやだなと思うようになってしまって、その頃アイメイト(盲導犬)のことを知って、盲導犬と歩けたらいいなと思い、ネットや書籍を使って色々調べました。 日本には今11ヶ所の盲導犬施設があるそうなのですが、色々調べる中でアイメイト協会の理念とか考え方に共感するところが大きくて、そこで訓練を受けるようになったのが49歳の時でした。 そこから4週間泊り込み、歩行訓練を受けて卒業してから約6年半です。
● トリトンが来てからの生活 これは180度変わりました。外出が楽しくなりました。 今までは決まったところ以外に行かなくて良いと思っていたのが、今度はどこに行ってみようとか気持ちが外に向けられるようになったというのが全然違うところですね。 気持ち的な面でも180度変わりました。 外に出て色々な人とお話をしたいとか思うようになり、実際にそういうことをしているうちに様々な人との出会いが生まれて、それが生活のハリになっていますし、自分の性格さえもが変わったような気がします。
● 盲導犬の刺傷事件を受けて 読者からの投稿という形で初めて朝日新聞に載ったのが8月1日でした。 その2日後くらいには情報が入ってきました。 こんなことする人間が本当にいて、はじめは怒りがこみあげてきました。 でもだんだん「自分も同じような目に遭うかもしれない」など恐怖や不安の気持ちがどんどん増大してきました。
● それにより外に出るのは怖くなりましたか 怖い思いはあります。 どれだけ自分がトリトンを守ってあげられるのだろうと、自分の限界を感じます。 ただ、自分にできることは全部やって自分が刺されても良いからこの子だけは守ってあげたいといつも思いながら歩いています。 いつも右のポケットにデジタルカメラを持って歩いています。 いつでもシャッターをきれるように右手に持って、もし何かあった時には自分が見えなくても目撃者になれるように努めています。
● 今まで怖い思いをしたことは 幸いなことに事件のような怖い思いはありません。 ただ歩行中に一歩踏み出せば駅のホームから落ちそうだったことなどは、外出すればするだけあります。 仲間から直接聞くことはありませんが、メールなどで「たばこの火を押し付けられた」とか、しっぽを踏まれたとか蹴飛ばされたとか、 そういった話はたまに耳にします。
● 地域でよく声をかけられますか よくかけられます。特に8月後半からが多いです。 色々なメディアで事件が報道されていますので、メディアの効果はすごいなと思います。 「ひどい人がいますね」とは「お気をつけて」などと声をかけてもらいました。
● まわりの人からの目について 事件は午前中のことだと思いますが、まわりに人がいないわけないだろうと感じています。 1人で怖かったらまわりの方の手助けを呼びかけながらでも見ていた方が声を出してくれたら、対処の仕方が違ったと思います。 ユーザーさんはまったく気が付かなかったということなので。
● 地域もそういう雰囲気になってほしいですよね 今日本で活動している盲導犬の数が1000頭ちょっとということなので、盲導犬と聞いて存在は知っていると思いますが、実際に見かけて盲導犬の使用者と話をするというのは本当にまれだと思います。 何を声かけて良いのかわからない、どう接して良いかわからないという方がほとんどだと思います。 私は静かに見守ってもらうのではなく、すれ違う時に「こんにちは」とか、「お気をつけて」とか声をかけてくれるだけでその人がいることを認識できます。 そういう温かな心をもって見守っていただきたいと思います。
● みなさんに注意していただきたいことは 私の場合は積極的に声をかけていただいて、実際の使用者である私から盲導犬の正しい知識を得てほしいなと思います。 今回の報道で有名なキャスターや著名な有名人が盲導犬は短命だとか過酷な訓練を受けているなどを言うことですごい影響力があります。 名もなき使用者の私が毎日人と接する中で盲導犬のことをお伝えしても、そういった報道でまたいっぺんにゼロに戻ってしまいます。 それがとても悔しいです。
● 多くの方に知ってもらうためにしていることは 地元の中学校などから講演依頼があった時には必ず引き受けるようにしていますし、そういった取材も積極的にお引き受けして、1人でも多くの方に本当のことを知っていただきたいなと思って心がけてはいるつもりです。
● 志賀さんにとってトリトンとは みなさんよく体の一部などと言いますが、私にとってはかけがえのない友達です。 例えば今回の事件でいうと、私が刺されても全然いいんです。 でもかけがえのないトリトンが刺されるというのは、自分が痛い思いをした以上に痛く感じてしまいます。 深い信頼関係で結ばれ、心を通わせられる「真の友達」です。
● 今後トリトンと一緒に挑戦したいことは やりたいことはたくさんあります。 今はまっているのは、フリークライミングです。時間があればジムに行って鍛えています。 できれば日本選手権や、パラクライミング(目の見えない方のクライミング大会)に出場したい。 実際に今スペインで世界大会が行われているので、生きている間にそのあたりまで到達できればいいなかと思っています。
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