シネマ日乗

入間アイポットのユナイテッド・シネマ入間で観た映画の感想が中心になります(多分)。 ネタバレになってしまう可能性も・・・・・・。 その辺、ご留意ください。
 
2021/10/24 19:43:00|映画 さ行
最後の決闘裁判
 リドリー・スコット監督が描いた「羅生門」、と言っていいのかな・・・・。
黒沢映画の「羅生門」は、起きた事件は一つなのに、立場が変わり、人が変わると全然話が違っちゃって、何が何だか、という話だった。

 で、今回はその気になれば、こんなお話にできたと思うんですよ。「名誉も何も傷つけられた妻のために頑張る男の話」ってね。20世紀だったら、こんなテーマで夫婦の絆だの、愛情だの、なんてスバラシイんでしょ〜〜!!って映画にしていっちょ上がり。ところが、この話は全くそれがない。凄いのは、端々の人(決闘の見物人とかまで!)に至るまで、思惑がぜーんぶすれ違う所。夫婦ですらそう。だから、決闘に至った時点ではもう、お互い何のためにやってんだか訳分んなくなってるようにすら、見える。
 それが、監督さんのたくらみでもあるし、誠意とも取れる。裁判で妻が聞かれる質問はどーしょーもなく無礼なのだが、あーこの手の質問、ついこないだまで、日本でもフツーに聞いてたじゃないですか、レイプ被害者に、と思う訳よ。忘れたとは言わせんぞ。
 
 今、アフガンがそうなんだけども、家父長制ってのは、女を男の所有物としか考えないんですよね。だから、女をレイプするのは、持ち主の男に対する「器物損壊」ってわけよ。その感覚は、この映画のセリフ中にぽろぽろこぼれて出てくる。けど現実は、えばってるくせしてビンボー、領地の事を全く理解してないし(まあ、戦に出る=単身赴任と同じですよね)、金をはぎ取るしか能がない、という一種の無能者として「騎士」が描かれてます。凄い視点だと思う。

 実際に領地を仕切って暮らし向きを整えてたのは、いわゆる教養もないような女性と平民ってことで、その辺の描き方が秀逸。さすがだと思います。

 あと、非常に優れた美術で、14世紀フランスの生活ぶりがよく分りました。なんか、寒そう。。。。で、暗い。そうそう、マット・デイモン、馬乗るのめちゃうまいぞ。

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2021/10/23 23:08:56|映画 やらわ行
竜とそばかすの姫
 これ、アイポットでロングランしてて、無視しきれなくなりまして。批判的な意見が多いようなので、あまり気が進まなかったんですが。
 で、観て、自分も批判側に回ってしまう。ちょっとダメダメ過ぎる、テーマもなにも。ここから先は思い切りネタバレになります。どうしても、話の内容を批判せざるを得ないので。

 仮想空間のアプリがあって〜〜、というのは、「サマーウオーズ」と同じような感じなんですが、どうやらバージョンアップしてるようで、イヤホンを付けると、仮想空間中にまるごと入り込んじゃう事ができる。ただ、勿論実体ではなくアバターを作るわけなんだけども。

 で、その中でいきなり超人気者になっちゃって、そこへ乱入してきた奴がいて、それを探して、一方、追っかけてくる奴もいて、混乱しそうですけど、ああ、成程、と分かりやすいのは、要は「美女と野獣」をパクった話だから。主人公のアバターの名前が「ベル」だし。

 現実世界の主人公はさえない女子高生で、ガッコでぐじゅぐじゅやってるんだけど、それには理由があって、彼女の母親が誰かよその子を増水した川から助けようとして、子供は助かったけど、親は死んじゃって、それがしかも彼女の目前で起きた事だから。まずね、これが酷い。こういう設定って、ありですか?主人公じゃないよ、母親の行動がアホだと思う訳よ。人命救助の基本は「自分の命の確保」が鉄則なの。当たり前でしょうが。そうしないと、周囲の半径100qに禍根が残るんだから。

 で、アバターの中で彼女とかかわった「竜」というのが、現実では父親に虐待されてる男の子だ、と突き止めて、彼女が一人で助けに行く、という設定がアホだ。あり得ない。虐待男に殺されますよ、下手すると。
 主人公は結局、自分の母親と同じ事をやって、周囲の大人は止めもしない。なんですか、そりゃ。大体、子供が子供を助けられるわけない。
 映画の中では、虐待男が彼女の髪をひっつかんで顔を傷つける。ハイ、傷害罪です。さっさと被害届を出して、警察に逮捕させなくちゃ。そうしないと、その男の子供が危ない。というか、彼女の父親だよ。あんた、何やってんの?自分の娘がそんな目に遭わされたら、半狂乱になる、のが当然なんじゃないですか?なに、ぼさっとしてるんだよ!!
 あと、男の子に言いたいのは、さっさと逃げなさいよ、という事。児相でも警察でもいい、アバター世界であれだけできるんなら、父親の言動や行動を隠し撮りなんてっチャラいでしょうが。それを見せりゃ、全員が動くはず。逃げる方向が完全に間違ってる。大人は信用できない、じゃなくて、じゃあどうすればいいのか、の知恵を主人公周辺の大人が出すのかと思いきや、なんも出てこないし。だらしなさ過ぎ。
 
 仮想世界で大人気の歌手ってことになってた彼女がその世界で身バレするんですけど、それも危険極まりない。それをきっかけにして「竜」と連絡が付く、のが目的で身バレしちゃったんだけど、そんな事、その仮想空間の人は知ってるわけない。という事で、その後の大騒ぎも目に見えちゃうんです。

 という事で、こうも大人を「信用に足らん連中」という位置づけする、のは勘弁ならん。児相や警察の人が見たら怒っちゃうんじゃないでしょうか。
 虐待する人間てのは、相当の人数で介入しないと、絶対に変わろうとはしないもんです。子供じゃとても無理。だから、現実離れした話になっちゃって、呆れてしまった。やりきれない・・・・・・。

 ということで、がっかり度No.1映画になってしまいました・・・・・・。

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2021/10/13 12:11:47|映画 か行
科捜研の女−劇場版ー
 日本で働く女性を長年演じてきた沢口靖子さんの代表作が映画化です。めっちゃ面白かった〜〜〜。

 いいなと思ったのは、チーム制であること。一人があれこれ抱え込むんじゃなくて、チーム全体がそれぞれの特性を生かしてきびきび動くのが楽しい。なんかね、働く女というと、何でもかんでもワンオペみたいなのが強調されがち(子供を育てるんですらですもんね)なんですけど、このドラマシリーズを見ていると、結局人を使う方法とか、チームワークをいかにつくるか、みたいな所を世の女が全然訓練されてないんじゃないか、と思っちゃうんですよ。フラットな組織のあり方については、多分男女半々位がやりやすいんだろう(男だけだと上下関係・女だけだと好き嫌いに基づく派閥ができがち)と思うんですが、科捜研のチーム制が、理想的に見える。

 「総理の夫」とどうしても比較しちゃうんですけど、抱え込むからいかんのですよ、と総理に言いたくなってしまった。

 あと、かつて大学の研究室にいた時の感じを思い出して、それも楽しかったな。匂いまで思い出される。ウイルスだの細菌だの、厄介な共生者なんですけどね。

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2021/10/06 23:25:00|映画 さ行
総理の夫
 うーん、まずねえ、「総理の夫」なら本になったり映画になったり、「総理の妻」じゃあ、本にも映画にもならん、どうなんでしょうね、こういうの?と思う訳なんですよ。

 仕掛けられるスキャンダルもねえ、なにこれ?って感じ。自分が当事者だったら、研究所なんかいられないっすよ。即仕事辞めてどっかに隠れちゃうよ。つーか、こんなしょーもない、仕事場にいられなくなるに違いない事に手なんか出しませんて。仕事を舐めてない?

 フランスの話。ミッテラン大統領は夜な夜な原チャリに乗って、愛人のとこに通ってたっていうけどねえ。勿論在任中の話ですけど。

 皇室の方がただ結婚するってだけでぎゃあぎゃあ小姑みたいな輩に糞みそ言われる、あれを見てると、日本のオヤジって糞どーしよーもないって思う訳。っていうか、男どもね。観てると、こりゃ、無理だ、、と思っちゃってね。という事で、後味が悪い。妊娠だ・出産だをネタにするというのもねえ、これ、彼女を総理にしたくなくて、あえて避妊しなかったんじゃないの、とか勘ぐっちゃうんですよ。つまりまあ、やっぱりオトコの側の問題に思える。だって、出張ばっかりの仕事じゃ、相手をサポートなんかできないっしょ、そもそも。お話の骨格が上滑りなんですよね。

 中谷美紀さんの衣装がとてもステキで、目の保養になりました。女性はだけど、ここも不利だよなあ。同じ服を着続けるってだけで文句言われそうでさ。男はなあ、同じスーツだとかなんとか、言われないっしょ。あーそーいうのも経費で落とさせろよ!

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2021/10/03 23:43:05|映画 ま行
MINAMATA-ミナマタ
 ジョニデ、最高傑作。

 で、今も続いている嫌な現実があります。水俣市では、やっぱりチッソ抜きでは市の経済が成り立たない、という。水俣市は現地での上映のときコミットしなかった。できなかった、というか。やらなかった、というか。どっちなんですかね?
 つまりはカネなんだけど、地域経済の発展のために何を犠牲にするか、というのはヘンでしょ。犠牲になる人があってはならない、というのがフツー。そのフツーが踏みにじられる様、を切り取った写真がいかに撮られたか、という映画です。
 昔はフィルムだったから、現像しないと写真の出来なんか分からない。だから命を削るような感じでシャッターを切ってたんでしょう。その辺もとてもリアルです。

 当然ながら日本では撮影できなかったようなんです。でも、非常に巧く撮られていて違和感が全くない。そして、日米の俳優さん達の抑えた熱演が光ります。だから、いつもは悪目立ちするジョニデが全く浮かない。この映画の優れた点だと思います。

 もう一つ、ジョニデご自身の悔恨のようなものがなんとなく漂っているんです。仕事に追われてるうちに(まあ、スター俳優だからしょうがないっちゃしょうがないんでしょうけど)家族とゴタゴタして離婚、はジョニデご本人の話でもあって。その辺がセリフで出てくるんだけど、とてもリアルに響く。

 「苦海浄土」をずいぶん前に読んだこともあるのだけど、色々改めて考えてしまう。ただ、これがきっかけで、日本の排水規制はめちゃめちゃ厳しくなったし、それを企業も守る。こういうのを輸出してほしいものです。

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