シネマ日乗

入間アイポットのユナイテッド・シネマ入間で観た映画の感想が中心になります(多分)。 ネタバレになってしまう可能性も・・・・・・。 その辺、ご留意ください。
 
2022/04/06 19:10:00|映画 た行
ドライブ・マイ・カー
 この映画、観たかったので、アイポットでやってくれてるのは本当にうれしいです。観てよかったなあ〜〜、という余韻に浸れる映画をまた一つ見つけることができました。邦画というのがいいわあ。

 ただ、この映画は間口が狭いんですよ。重要なプロットが演劇なんだけど、それも近現代の大傑作であるところの、ベケット作「ゴドーを待ちながら」&チェーホフ作「ワーニャ叔父さん」の2作が出てきます。そもそもお話自体が、「ワーニャ叔父さん」を稽古して上演する、話なので、チェーホフのこの作品中のセリフがあちこちに出てきて強い意味を示唆する、仕組みになっています。映画越しに「ワーニャ叔父さん」を見せられている、と言ってもいい。しかし、ベケットだのチェーホフだの、知っている人がいるのかどうか?

 自分は知っている。ベケット作品は読んでる。チェーホフも知っている。「ワーニャ叔父さん」は読んでいないが、「かもめ」は読みました。どっちの作品も、読んだときはピンとこなかったんですけどね。知っているかどうかは、この映画の印象をかなり変える可能性が高い。
 この辺は、いかにも村上春樹原作作品だな〜〜〜、と思わされる。中で流れるベートーヴェンの弦楽四重奏3番だって、知ってる人は知ってるけど、知らん人は興味すらないでしょ。な〜んか、インテリ知識をひけらかしている感じがして、鼻につくんですよ。だもんで、村上春樹ってあまり好きじゃないんですよねえ。
 
 ただ、こういう映画を観ると、そうした知識ってやはり重要なものだな、とも思うんです。間口の狭さを突破できる知識情報を持っててよかったな。で、劇中劇とはいえ、この傑作を上演した役者さん達はやはり凄いと。

 劇は重要なんですが、結局この映画のテーマは「時間」なんです。自分はそう読んだ。人が色んなことと折り合いをつけるって、3日じゃ無理でしょ、それなりの時間とタイミングと運が多分必要なんですよね。そういう話です。だから長尺になるし、予告編は非常につくりにくい。予告編ではチェーホフなんかかけらも出てこないし。

 似たテーマの映画といえば、「モンタナの風に抱かれて」もそうだし(これはテーマが馬だったから、やっぱり間口が狭い)、「バードマン」もそうですね。「バードマン」も演劇がプロットだったし。どれも傑作と思ってますけど、「時間」がテーマの作品て日本では少ないと思うので、大事に考えたいなと。

 あとねえ、以前から、男の人ってのはどうしてこう、自分の抱えてる問題からつるりぬるりと逃げるんかね?と不思議だったんだけど、あーこういう事か、と若干理解できたような。となると、この映画、男ウケは悪いでしょうなあ。

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P.S「ゴドーを待ちながら」は、かつて緒形拳さんが日本中で上演してたことがありました。難しい作品なんだけど、揺さぶられる人が多いらしくて不思議なことだ、とおっしゃっていたのを覚えています。







2022/02/16 12:16:00|映画 か行
Coda コーダ あいのうた
 フランス映画「エール!」のリメイク作品です。「エール!」はねえ、観たかったんだけども、当時もう咳がひどくって映画館に行けず、結局観損ねた。ので、どうしてもこれは観たかったんです。期待に違わぬ、いい作品でした。めっちゃ楽しかった〜〜〜〜。

 主人公の家族は、漁船に乗ってて、タラ漁をやってる。健聴者は彼女だけで、残りは全員耳が聴こえないもんで、彼女が常時通訳みたいな立場に置かれてるわけ。一方、彼女が入学した高校で、歌の才能を見出されて〜〜〜、というのがメインのお話ですけど、同時並行で漁業者と仲買人のトラブルや、学校内でのトラブル等々があれこれ進みます。話が一つじゃないので、日本だとこういう設定にありがちな「努力してどうこう」にならない。一種の青春ものでもあって、「ギルバート・グレイプ」や「フラッシュダンス」を思い出しました。

 ジョニ・ミッチェルの名曲が使われてます。知らなかったんですけど、こういう歌を歌ってた人なのか〜〜。あと、彼女が選択する授業での選択科目の「音楽」なんですが、NHKの「グリー!」に出てくるようなもので、我々日本人が思い起こす、いわゆる「音楽」の授業とはぜーんぜん違ってて、これも面白かった。成程ねえ、やっぱ日本人って、ちょっとマジメすぎるんじゃないですかね。

 日本でリメイクするとしたら、どうかなあ?先生役は竹中直人さんで決まり!って感じでしたけど。やってみてほしくなりました。

 マーリー・マトリンがお母さん役で出演しています。彼女が主演した「愛は静けさの中に」は名作で、すごく好きなんですが、久しぶりに見た彼女はめっちゃ魅力的な人になってました。あと、お父さん役の方もナイス!!いい夫婦ぶりで、よかったわあ。

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2022/02/14 0:04:23|映画 その他
355
 前回の映画がめちゃ気に食わないのは、仕事ってもんをどこか小ばかにしてる点。という事で、全くそうじゃなさそうな映画です。作るの大変だったろうな〜〜〜、と思います。

 女性エージェントが5人、5カ国。始まりはコロンビアだから、コロンビアが入って来る。一応CIAが中心っぽいんですけど、他にドイツ・イギリスが入ってきて、ついでに中国。最後は上海で大達回りになります。

 かなり脚本が秀逸じゃないかと思うんですが、プロットはありがちなんです。ガジェットがあって、そいつが世界を操れる、その争奪戦って、こないだも聞いたような・・・・・。面白いのは、悪い奴らが一枚岩じゃないところ。なるほど、悪党が一致団結するはずないもんねえ、ので、単純な話にならない。対する女性側については、5人いると、なかなか性格やバックグラウンドを描き分けるのが難しいと思うんだけど、上手にパキパキ紹介して、理解しやすい。以前「ワイルド7」を観た時は、7人の特技すらよー分らんで終わっちゃって、複数を描くのは難しいんだなあ、と感じたもんだから。

 脚本がよくできてると感じたもう一つの理由は、多国語が使われてるから。当たり前、じゃないです。混乱しかねないから。それも実に巧く処理されてます。話がうま〜〜〜く展開して、整理されて頭に入る。

 アクションはかなり凄い。PG12になるわ、これは、という内容。痛快な話ではないけど、さすが、プロのエージェント軍団だ!と思わせるものがあるんです。という事で、かなり面白かった〜〜〜。もっとあちこちで公開すればいいのに〜〜。

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2022/02/09 22:37:26|映画 た行
大怪獣のあとしまつ
 一言で言うと、「土屋太鳳ちゃんのむだづかい」って感じの映画でした。

 なんかさあ、政府や隣国をコケにするのはいいけどさあ、センスなさ過ぎじゃないでしょうか?

 で、こんな映画に文化庁が助成を出しています。「助成金のむだづかい」って気がしました。「パンク侍」の方が、まだマシだぞ。

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2022/01/31 23:04:10|映画 か行
キングスマン:ファースト・エージェント
 毒気満載の第一作、ぶっ飛んだ第2作、で、今回はいきなり時間を遡って、20世紀初頭のお話になります。どんな映画なんだろう?と思ったら、意外や意外、めっちゃクソ真面目な映画でした。前半と後半が全然違うし〜〜〜。

 第一次世界大戦て、結局なぜ始まったのかがよく分からないんだそう。とりあえずきっかけは、サラエボでオーストリア皇太子夫妻が暗殺された、ことだというが。これがなぜか、犯人追及にならず、国同士のうっぷん晴らしみたいになっちゃったようで・・・・・・。銃弾の雨あられ、毒ガスが撒かれ、近代の技術がうんとこさ殺人に投入された。それに巻き込まれたイギリスの公爵一家の話が中心になります。

 一応黒幕がいて、そいつをどうにかすることでドイツを負けさせよう、と奮闘する、そのアクションは面白いんですけど・・・・・・。うーん、前2作を考えると、絵空事なら、こういうスパイ軍団があれこれ介入できる、でも、圧倒的な史実の前では無力だなあ‥‥、と思わされちゃうんです。

 チャイコフスキーの「序曲 1812年」が効果的に使われてます。この曲、実は大嫌いなんですが。国威発揚音楽なんだよねえ、これ。こういう目的に音楽、特に国歌を使っちゃイカンと思います。使う時が来ないように、全力を尽くさにゃ。

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P.S 以前「シンドラーのリスト」で、生真面目で冷酷なドイツ将校を演じたレイフ・ファインズさんが、今回は正反対の役をやってます。この方、アクションがやりたいんでしょうねえ。凄いです。