今月の句会の兼題は「風光る」と「蕗の薹」。
「風光る」は俳句独特の季語で、日差しが鋭くなった情景を
視覚的に表現した言葉である。
「蕗の薹」はおなじみの植物。春の兆しを具体的に示す
代表的な早春の季語である。
今月は7句出句中、5句が互選となる。
信号のなき輪道や風光る
「輪道」は造語。サイクリングロードの意味。
それを理解してくれた俳人がいた。「信号がなき」との措辞で
全力で自転車専用道を疾走している景を想像してくれた。
やはらかき風にほころぶ蕗の薹
蕗の薹日に日に空の広がりぬ
蕗の薹が地上に現れる様子を描写した句。
春の兆しを風や光で表現した句である。
長き髪束ねて探す蕗の薹
田畑打つ鍬にて採りし蕗の薹
蕗の薹を採取する人間の行動を描写した句で、
「田畑打つ鍬」の句は3点句となる。
有りそうでない盲点の句だとの評を得る。
現実の描写ではなく想像の句である。
現実は芽吹き始めた莟を手で摘み取るらしい。
鍬で採る情景を見た人はいないが、
ありえる情景と解釈したらしい。
事実、地上に姿を現した蕗の薹を
鍬で掘り返している農夫の記憶がある。
今回の句会は高得点の句が多々あり、
互選にならない句が多数を占め、
「せっかく作ってきたのに全て没で無念」
との声が多数あった。
参考のために今回の最高得点を得た句を記す。
形よき僧の頭や風光る(7点) Iさん
見せにきし征服すがた風光る(6点) Sさん
一つ摘み一日満ちたり蕗の薹(5点) Oさん
「僧の頭」はユーモアがある句で俳諧味があり、
絶賛された句である。着想に優れた個性が感じられる。
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