小アジア原産で、現在は品種改良が進み、赤・白・黄色・桃・黒
紫など花色はきわめて豊富。春、直立する花茎の上に1個の釣鐘
形またはコップ形の花を開く。日本では新潟・富山の両県で園芸
栽培が盛ん。
チューリップ喜びだけを持つてゐる 細見綾子
この句は名句で、俳句に興味がある人なら誰でも知っている俳句
といってもいい。逆に知らない人は俳句に興味がない人か、もし
くは俳句の初心者といってもよい。
チューリップ花びらが外れかけてをり 波多野爽波
これ俳句? こんなところに注目し、それをそのまま句に詠む?
逆に俳句らしくないところがこの句の価値である。まず驚かされ
るのは、こんな些細なことも俳句になるのかという驚きである。
こんな哀れな花の姿を俳句に詠もうとする写生に徹した貪欲さに
脱帽する。この俳人にかかれば何でも写生してしまいそうな気迫
が感じられる。
鉛筆で書く音静かチューリップ 星野立子
チューリップの花を写生しているところを詠んだ句である。この
後、色づけされてゆくのだろう。まだ白黒の素描を「書く音静か」
と音で表現したところが俳人らしいと言える。
絵日記や家より大きなチューリップ うさぎ
子どもの心理は、興味が高いものほど大きく明るく描く。この絵
日記を描いている子どもは女の子かも知れない。きっと綺麗な色
のチューリップだったに違いない。
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