妻眞喜子が失明に近い状態になった2023年の暮れごろから、鑛一は朝・昼・晩3度の食事を毎日作るようになった。これまで、料理作りは眞喜子に任せていたので、鑛一は料理作りの経験は全くない。一方、眞喜子は緑内障で目が見えなくなったが家族5人の食事を長年作り培った料理作りの技は持っている。その眞喜子から調理の指導を受けながら、この半年間、食材の購入から、米研ぎ、ご飯炊き、買った食材を組み合わせた料理、調理、食後の食器洗いなど一連の食事、後片付けなどを教わりながら料理を作ってきた。
2024年4月7日にカレールーを使いカレーライス、8日には肉、野菜を煮込んだシチューを作った。10日には牛肉と玉ねぎを使い牛丼を作り、「美味しい」と料理長(眞喜子)から「合格」の評価を受け少しは自信がついた。
物作りは得意で、若い頃は真空管ラジオ、トランジスターが手に入るようになってからトランジスターラジオ、また電車の模型などいろいろな物作りを楽しんだ。研究・教育職についてからは、人間が物や人を動かす動作の研究を始めた。研究に使う実験装置は手作りでる。コップを手に持ちそれを握ったままで、コップに水を注ぐ場合、手・指の力はどのように変化させているかということに疑問を持ち、コップに入る水量(重さ)と手・指がコップに加える力(ニュートン)を測ったことがある。その結果、水量と指の力は概ね比例していることがわかった。このような研究用の実験装置やセンサを自作し、実験データ(成果)を得ることと料理・調理で美味しい食事を完成させるプロセスは、似ていることに気づいた。
以下は物作りと料理作りの類似点を示す。アンダーラインは物作り、斜体は料理作りの例である。
物作り/【料理作り】:
作る製品を設計する【食べたい料理を考える】、
作る製品の材料を確保する【肉、魚、野菜、調味料などの買い物に出かける】、
道具・工具、機械類(ボール盤、旋盤など)などの機械の力を使う【包丁・鋏など切る用具、鍋・釜・器などの調理用具、電気釜・IH鍋・電子レンジなど煮る、焼くなどの調理熱源、高温熱源であるガスを使う】、
出来上がった作品の検査・評価をする【
味、盛り付け、見立てのよさなどを評価する】、
完成した製品で満足する【料理の外見が綺麗、食べて美味しいなどで満足する】 料理を作ったことがない物作り専門の工学系人間が生きるために止むを得ず料理を作り始めた。物作りと料理作りのプロセスがとてもよく似ていることに気がついたので上記したことを考えた。料理は作り始める前に食材を求める必要がある。食材や調味料の種類の多さ、肉・魚・野菜など食材の傷み具合、食材保存方法など数多くの問題が調理・料理にはある。それらの組み合わせを考えると多技にわたる調理と料理があって、出来上がった料理は異なってくる。そのため、料理は非常に奥深いことが理解できた。
さらに分かったことは、食材以外に料理鍋、釜、包丁、まな板、食べるために必要な茶碗、箸、噐など、こちらも数多くの調理用具や食器などがある。このように考えると料理、その準備、食事することは思っていた以上に奥深いことも理解できた。
年齢と体力を考え、終活の一環として現役時代に使った本や書類、写真やデータなどをパソコンに溜め込んだもろもろのデータなどを少しずつ片付けている。予想外だが、3食の食事準備に時間を取られるようになり、思うように身辺整理が進んでいないのが現状である。しかし、調理・料理には、食材のほか、使用する鍋・釜・フライパン、調理の熱源であるガス・電熱機、電子レンジ、IHなどの調理用具も多く、準備が複雑で時間を要する。それが出来ていれば前述したように楽しく面白くなるので、この調子で眞喜子に喜んでもらえる美味しい料理の開発と探求をしたいと思っている。
2024年4月24日